コラム

生物の行動を決定づける「自由エネルギー」とは?「量子科学」と「脳科学」の融合が解き明かすこと

2026年01月14日(水)17時52分

山田氏はまず、私たちが幸せに生きるための鍵となる「ウェルビーイング(心身の健康と幸福)」という概念を、量子論の視点から捉え直すことを提案した。ウェルビーイングを高めるためには、「今」に集中し、過去や未来への不安(心配)を和らげることが重要だと言われている。この不安のメカニズムを、西郷氏も触れた「不定性(決まっていないこと)」という量子の概念で説明する。

「不安」は、まだ起こってもいない未来について、ネガティブな予測を立ててしまう心の状態である。これは、「自由エネルギー原理」でいうところの「予測誤差」が大きい状態、つまり「世界がどうなるか決まっていない(不定性が高い)こと」に脳が戸惑い、無理に答えを確定させようとする心の動きとも捉えられる。

山田氏は、ウェルビーイングには二つのタイプがあると説明する。一つは「ヘドニック・ウェルビーイング(快楽的幸福)」で、気持ちよさやストレス軽減を重視する。もう一つは「ユーダイモニック・ウェルビーイング」で、自分らしく生きる感じや意味、成長を重視するアリストテレス由来の概念だ。

「楽な道と意味のある苦労、皆さんならどちらを選ぶか」

山田氏は問いかける。山田氏が重視するのは後者だ。そして、このユーダイモニック・ウェルビーイングには「不定性との付き合い方」が深く関わっているという。

日本人は不確実性を特に嫌う

変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)の頭文字を取った「VUCA(ブーカ)の時代」と呼ばれる現代の時世を引き合いに、山田氏はこの言葉の背景には「予測が難しく思い通りにならない状況は良くない。不確実性や曖昧性を減らして最適化を目指そう」とする価値観がある。

プロフィール

南 龍太

共同通信社経済部記者などを経て渡米。未来を学問する"未来学"(Futurology/Futures Studies)の普及に取り組み、2019年から国際NGO世界未来学連盟(WFSF・本部パリ)アソシエイト。2020年にWFSF日本支部創設、現・日本未来学会理事。主著に『未来学』(白水社)、『生成AIの常識』(ソシム)『AI・5G・IC業界大研究』(いずれも産学社)など、訳書に『Futures Thinking Playbook』(Amazon Services International, Inc.)。東京外国語大学卒。

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