コラム

K-POP第4世代・NMIXXの「Blue Valentine」が大ヒット。やっと今、時代が追いついてきたのか

2025年12月06日(土)11時00分


NMIXX「DICE」ティザー(本編は次ページに掲載) JYP Entertainment / YouTube


ターニングポイントとなった「DICE」と進化した「MIXX POP」

流れが変わるきっかけを作ったのは、2022年9月に発表した「DICE」だろうか。"デビュー曲で提示したものこそが私たちの美学"と言わんばかりに、同じ方向性で勝負した「DICE」は、ジャズやトラップ、ヒップポップなどさまざまなジャンルを組み合わせたもので、単純に踊らせてはくれないクセのあるリズムも健在だった。

この時点で「MIXX POP」と呼ばれる彼女たちの独自スタイルが完成。それを祝うかのように同曲は主要チャートの上位にランクインする。このスマッシュヒットのおかげで上昇気流に乗った彼女たちは2023年の春、今度は「Love Me Like This」でグループ初となるMelOnチャート・トップ100のベスト10入り/音楽番組の首位という名誉を手に入れた。「MIXX POP」をより分かりやすく整理した「Love Me Like This」を通して、今まで以上に幅広い層へ向けてグループの魅力をアピールすることに成功し、あわせてメンバー6人のキャラクターやビジュアルの良さも十分に認識されたに違いない。


NMIXX「Roller Coaster」ティザー(本編は次ページに掲載) JYP Entertainment / YouTube

弾みをつけた彼女たちは、音楽的な面でのさらなる成長を見せようと精力的に楽曲をリリースしていく。なかでも2023年の夏に発表した「Roller Coaster」はお薦めだ。同曲はアーバンハウスをベースにファンク、ボサノバも加えた実験的なポップスだったが、多くの人に愛されてロングヒットを記録。続く「DASH」(2024年1月)では、近未来的なムードを漂わせながらもアレンジはレトロなR&Bという組み合わせの妙で音楽マニアたちをうならせた。

さらにソウルフルなドラミングとコケティッシュなボーカルで"K-POPの枠に収まらないもの"を目指した「High Horse」(2025年3月)が、米ビルボード選定『2025上半期ベストK-POPソング25』の2位に輝くなど、アーティストとしての探求心を忘れない上記の3曲は、最近NMIXXを知ったリスナーに特に聴いてもらいたい。


NMIXX「DASH」ティザー(本編は次ページに掲載) JYP Entertainment / YouTube


NMIXX「High Horse」ティザー(本編は次ページに掲載) JYP Entertainment / YouTube

「N」が意味する未知数と、成功の要因

ちなみにグループ名=NMIXXは、now、new、next、n(未知数)を指す「N」と、「MIX」を組み合わせたもの。「新しい時代を担う最上の組み合わせ」という意味を込めたそうだ。あらゆる方面から音の断片を持ってきてパズルのようにはめていく曲作りはまさにそうであろうし、どんなサウンドやパフォーマンスでも自分たちの色に染めてしまうのは、ポテンシャルの高いこの6人だからこそ可能なのかもしれない。

 それにしても、だ。記録的なヒットとなった最新曲「Blue Valentine」は、ユーロポップ、ブームバップ、デジタルロックなど、あいかわらず多彩なジャンルを取り込み、リズムの変化も激しい。活動当初からブレないスタイルのままで大ブレイクを果たしたのは、こうしたミクスチャー感覚と大胆なリズムチェンジを良しとしたサウンドメイクにようやく時代が追いついたからだろうか。

同じことが2025年を代表するヒットメーカー・TEDDYの作風にも当てはまるのは単なる偶然ではないはずだ。来年はこのあたりに注目しながらK-POPシーンを追っていきたいと思う。

プロフィール

まつもとたくお

音楽ライター。ニックネームはK-POP番長。2000年に執筆活動を始め、数々の専門誌・ウェブメディアに寄稿。2012年にはK-POP専門レーベル〈バンチョーレコード〉を立ち上げ、イ・ハンチョルやソヒといった実力派を紹介した。現在は『韓流ぴあ』『ジャズ批評』『ハングルッ! ナビ』などで連載。LOVE FMLuckyFM楽天ポッドキャストの番組に出演中。著書は『K-POPはいつも壁をのりこえてきたし、名曲がわたしたちに力をくれた』(イースト・プレス)ほか。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:軽飛行機で中国軍艦のデータ収集、台湾企業

ワールド

トランプ氏、加・メキシコ首脳と貿易巡り会談 W杯抽

ワールド

プーチン氏と米特使の会談「真に友好的」=ロシア大統

ビジネス

ネットフリックス、ワーナー資産買収で合意 720億
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 7
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 8
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story