コラム

「王室離脱」騒動の只中にメーガン妃の「ダメ父」がまた暴言──意外にも同情を集めている理由

2020年01月24日(金)17時20分

2018年5月には結婚式が予定され、トーマスさんも出席予定だった。「何とか、自分のゴミのようなイメージを変えたい」。そう思っていたところ、あるイギリスのメディア関係者から連絡をもらい、「良い写真を撮りませんか」と誘われた。

これに乗ったトーマスさんは、ネットカフェで結婚式についての情報を読んだり、カフェで雑誌をめくったり、体のサイズを測る様子を撮影してもらった。すべてが相手に指定された設定で、「体のサイズを測る」場面は「結婚式の準備のために、洋服のサイズを測ってもらうトーマスさん」というイメージのはずだった。

ところが、大衆紙に掲載後にこれが「やらせ」であったことが発覚すると、トーマスさんに批判が集中した。あたかも「たまたま、撮影された」ふりをしていたことや、一連の撮影で、トーマスさんが多額の報酬を受け取ったことが反発を買った。「王室に嫁ぐ娘を使って、お金儲けをするなんて」という批判である。
 

結婚式には出席できず

チャンネル5の番組によると、このスキャンダルが発覚したことで、トーマスさんは王子とメーガン妃から電話をもらい、「だからメディアに話すな、といったでしょう」と厳しく怒られた。「僕の言うとおりにしていたら、こんなことにならなかったのに」とヘンリー王子に言われたトーマスさん。かなり「カチンときた」ようだ。「私が死ななくて、残念でしたね。死んだら、悲しそうな様子を見せられたのにね」。そう言ってトーマスさんは受話器を置いてしまったという。

娘や王室に多大な迷惑をかけてしまったことで、トーマスさんはパニック状態となった。心臓に負担がかかり、結婚式の直前、緊急入院してしまう。それでもトーマスさんはロンドンに飛ぶつもりだったが、「ドクターストップがかかった」。

トーマスさんは病院からメーガン妃に電話した。「メーガンは泣いていた」。

結婚式の様子を、トーマスさんは保養施設に置かれたテレビで見た。自宅前にはメディアが張り付いていたので、帰るに帰れなかったのである。

「緊急入院?これもやらせじゃないの?」。この時、イギリスでは「トーマスさん=ダメな父親」説が圧倒的となった。

この後、トーマスさんはあっと驚く行動に出る。

テレビ出演、大衆紙の取材も受ける

出席できなかった結婚式から1カ月後、トーマスさんはイギリスの民放の朝の情報番組「グッドモーニング・ブリテン」に出演し、ヘンリー王子の政治的発言(トランプ米大統領を支持しないなど)を紹介するとともに、式に出席できなかったことで自分が「歴史の些細な一コマ」になってしまったことを残念そうに語った。ちなみにだが、イギリスの王族は政治的姿勢を公にすることは許されていない。

プロフィール

小林恭子

在英ジャーナリスト。英国を中心に欧州各国の社会・経済・政治事情を執筆。『英国公文書の世界史──一次資料の宝石箱』、『フィナンシャル・タイムズの実力』、『英国メディア史』。共訳書『チャーチル・ファクター』(プレジデント社)。連載「英国メディアを読み解く」(「英国ニュースダイジェスト」)、「欧州事情」(「メディア展望」)、「最新メディア事情」(「GALAC])ほか多数
Twitter: @ginkokobayashi、Facebook https://www.facebook.com/ginko.kobayashi.5

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米中小企業、26年業績改善に楽観的 74%が増収見

ビジネス

米エヌビディア、株価7%変動も 決算発表に市場注目

ビジネス

インフレ・雇用両面に圧力、今後の指標に方向性期待=

ビジネス

米製造業新規受注、8月は前月比1.4%増 予想と一
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 10
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story