コラム

「ステルス増税」と、低所得層・子育て世帯支援の拡充...英政府が目指す矛盾した未来

2025年11月26日(水)21時11分

英国経済は低成長と生活費危機に直面している

英国の10年物、30年物国債の利回りはそれぞれ4.53%、5.49%。米国は4%、4.68%、ドイツ2.67%、3.3%、日本1.82%、3.2~3.38%と英国の長期、超長期金利は米独日に比べるとかなり高めになっている。英国の借入コストは高い。

英国では財政赤字・借入ニーズの増大とインフレ再燃が懸念されている。英国はインフレ率が比較的高く、政策金利・中立金利水準も欧州や日本より高めとみられている。英国は国債の供給過多と需給環境の緩みが金利上昇圧力になっている。

英国経済は低成長と生活費危機に直面している。財政規律派のリーブス氏は市場の信頼と労働党内左派の要望を予算の中で整合させる苦肉の選択を迫られている。しかし増税と再分配の強化だけで低成長から抜け出すのは難しく、生産性向上や投資の成長戦略が問われている。

今回の秋季予算はスターマー政権にとっての正念場だ。財政が逼迫し、その場しのぎの綱渡りが続く中、英国が低成長と生活水準停滞の悪循環から抜け出せるかはリーブス氏の「次の一手」にかかっている。

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プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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