コラム

英国史上最悪の「国家的レイプ」事件に「英首相が加担した」と、イーロン・マスクが糾弾する理由

2025年01月07日(火)20時11分

被害は白人の貧困、崩壊家庭の少女に集中していた。こうした少女は社会の誰からも相手にされない極めて脆弱な存在だったのだ。

加害者の大半は被害児童から「アジア系」と報告されていたが、地元議員はパキスタン系コミュニティーとの軋轢を避け、問題に対処しなかった。何人かの職員は人種差別主義者だと思われることを恐れ、加害者の民族的出自を明らかにすることに神経質になっていたと打ち明けた。

「スターマー氏が事件の詳細を知っていた証拠はない」

グルーミングギャングが最初に起訴されたのは10年。判明している被害児童は英国全体で数千人にのぼる。スターマー氏はスキャンダルが紛糾していた08~13年に検察トップを務めた。

マスク氏がやり玉に挙げるのはグレーター・マンチェスターで09年に加害者とされる人々が起訴されなかった事件だ。

英紙フィナンシャル・タイムズ(1月6日付)は「当時スターマー氏が事件の詳細を知っていたことを示す証拠はない」と指摘する。

09年の処分は2年後に覆され、9人が有罪となった。関係者によると、スターマー氏は過去に間違ったことを公に認める決断を100%支持したという。

イングランド・ウェールズにおけるアジア系人口は全体の9.3%、カリブ・アフリカ系が4%。児童性的虐待の加害者にはパキスタン系が多かったことから、白人が異教徒の移民に迫害されているという文脈で反移民の極右や強硬右派に攻撃されるようになった。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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