コラム

従業員700人から訴えられた英国のマクドナルド...セクハラ・性的虐待が蔓延する「捕食者の楽園」の実態

2025年01月18日(土)20時34分

女性元従業員(17)は20歳年上の同僚から人種差別的な言葉を浴びせられた上、性器を見せられ「赤ん坊を作りたい」と言われた。別の女性元従業員(17)はシニアマネジャーに首を絞められたり尻をつかまれたりし、シフトマネジャーからは性的な画像を送りつけられた。

ベイプ(電子タバコ)と引き換えに性行為をするようマネジャーからほのめかされた16歳の男性従業員もいた。16歳の新人女性にセックスを迫るマネジャー。どちらが先に新人従業員とセックスできるか現金を賭けて冗談を言い合う男性マネジャーと先輩従業員......。

47人が懲戒処分、29人が解雇

中傷的な言葉、人種差別的なジョーク、反ユダヤ主義的な虐待、スタッフ間の性的関係が職場で常態化していた。マクドナルド英国・アイルランドのアリスター・マクロウ最高経営責任者(CEO)は同年11月、同特別委員会で職場文化を根本的に改革すると誓った。

従業員がオンラインで職場での性的虐待やハラスメントを告発できる仕組みを導入。これまでに75件の告発があり、47人が懲戒処分を受け、29人が解雇されたとマクロウ氏は報告した。しかし1月7日に合わせたBBC報道を見る限り性的虐待やハラスメントは改められていない。

原因の一つと考えられるのは、9割近くの従業員が使用者の求めに応じ働いた時間分の賃金を受け取るゼロ時間(待機労働)契約を結んでいることだ。表向き最低保証時間への切り替えを選択できるが、何人かはゼロ時間契約の不安定さが力の格差につながっていると証言している。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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