コラム

30歳未満、特に女性はアストラゼネカ製ワクチン接種には細心の注意を 血栓症・血小板減少のリスク

2021年04月08日(木)14時04分

下は感染の広がりが中程度のスライドだ。

kimura2021040802.jpg

次はかなり感染が拡大している状況でのスライドだ。

kimura2021040803.jpg

AZワクチンは重症化と入院リスクを劇的に減らすため、高齢になればなるほど接種を受けるベネフィットが大きいことが一目瞭然だ。

欧州全体では脳静脈洞血栓症169症例、内蔵静脈血栓症53例

欧州連合(EU)の欧州医薬品庁(EMA)もMHRAと同時に記者会見し、「血栓症と血小板減少の同時発生はAZワクチンのごくまれな副反応としてリストアップすべきだ」と指摘した。欧州経済領域 (EEA)とイギリスでは3月22日時点で約2500万人が接種を受け、CVSTが62例、内蔵静脈血栓症24例が確認された。ほとんどが60歳未満の女性だった。また18人が死亡した。

4月4日時点では3400万人が接種を受け、CVSTが169症例、内蔵静脈血栓症53例が報告されている。

AZワクチン接種直後にCVSTを発症したのは100万人当たり2.2人(MHRA)から5人(EMAの最新集計)とばらつきがある。オープン・ユニバーシティーのケビン・マッコンウェイ名誉教授(応用統計学)は「ワクチンの接種にかかわらず1年間では100万人に2~5人の割合でCVSTは発症する。最近の研究では13~16人という可能性も指摘されている」という。

EMAは「血栓症と血小板減少の同時発生はごくまれであり、ワクチンの全体的なベネフィットは副反応のリスクを上回る」と結論付ける。その一方で「もっともらしい説明の一つは免疫応答だ」として、抗凝固薬ヘパリンで治療された患者に時々見られるヘパリン起因性血小板減少症と似ていると分析している。現時点ではリスク要因を特定できないという。

英予防接種合同委員会(JCVI)は「このごくまれな症状に関する既知のリスクファクターは現時点では存在しない。AZワクチンの1回目接種を受けたことに対する特異体質反応のように見える」と分析し、MHRAも「血栓症と血小板減少の同時発生はコロナ感染者でもワクチンの未接種者にもみられないことに留意することは重要だ」と指摘した。

エコノミークラス症候群など血栓症は誰にでも起こりうる症例だ。しかもコロナに感染すると、血栓症を伴うことは少なくない。筆者の友人である30代の女性はコロナに感染して寝込んだ後、皮膚がかゆくなり、足に小さな血斑がみられた。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 6
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 9
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 10
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story