コラム

政治における日本の男女平等はイランより一つ上の世界144位

2019年12月18日(水)14時30分

新首相サンナ・マリーン率いるフィンランドの新内閣 Lehtikuva Lehtikuva-REUTERS

[ロンドン発]最も雇用拡大率が高い8分野のうち6分野(マーケティング、販売、商品開発、データと人工知能、エンジニアリング、クラウドコンピューティング)で女性は過小評価されていることが、世界経済フォーラム(WEF)の「男女格差報告書2020」で分かった。

女性が男性より優位なのは人と文化、コンテンツ制作の2分野のみ。女性は大学で専門的なスキルを身につけても職場で正当に評価されない。経済参加の男女格差を解消するのに257年もかかるそうだ。

17日に発表された報告書によると、日本の男女平等ランキングは昨年より11下がって121位(153カ国中)。世界で一番男女格差が少ない国は11年連続でアイスランド。世界最年少の現職指導者で同国史上最年少のサンナ・マリーン首相(34)誕生で注目を集めたフィンランドは3位。

KimuraMasato191218_2.jpg

2006年以降、毎年発表されている「男女格差報告書」は(1)経済参加(2)教育(3)健康(4)政治参加の4つの指標を総合的に判断して世界ランキングを付けている。日本のランキングは坂道を転げ落ちるように下がっている。

「女性活躍」は見る影もなく

経済参加と政治参加の指標から日本とフィンランドを比較してみた。

【経済参加】115位0.598(フィンランド18位0.788)
・労働力の男女比 79位0.814(同13位0.959)
・賃金の男女格差 67位0.672(同9位0.798)
・勤労所得の男女比 108位0.541(同33位0.720)
・管理職の男女比 131位0.174(同77位0.467)
・専門・技術職の男女比 110位0.680(同1位1)
(筆者注)指標は1に近づくほど男女平等を達成。

経済参加のランキングは2006年の83位から115位に転落。日本の女性管理職や専門・技術職はフィンランドに比べて圧倒的に少なく、同じ職種でも女性の賃金は男性の7割に満たない。男性の長時間労働を改めなければ、女性の労働参加も賃金格差の解消も進まない。

【政治参加】144位0.049(フィンランド5位0.563)
・国会議員の男女比 135位0.112(同7位0.877)
・閣僚の男女比 139位0.056(同20位0.600)
・国家元首の在任年数の男女比 73位0(同12位0.316)

日本の政治参加も2006年の83位から2014年に129位に転落。2016年には103位まで改善したものの、今年は144位まで下がった。

下を見ればイラン、ナイジェリア、ベリーズ、ブルネイ、レバノン、オマーン、イエメン、パプアニューギニア、バヌアツと9カ国しかない。これが先進7カ国(G7)に加わる国の姿なのか。

女性閣僚は昨年、女性は片山さつき地方創生相1人だったが、現在は高市早苗総務相、森まさこ法相、橋本聖子五輪相の3人に増えた。安倍晋三首相は「女性活躍」を看板政策に掲げるものの、女性の政治参加はいっこうに進まない。

拘束時間が長く、選挙区と国会を行ったり来たりする国会議員の仕事は女性には負担が大き過ぎる。オトコ社会の永田町が男女の格差解消を遅らせているのは間違いない。女性が女性としての役割を引き受けないなら、男性と同じように働けと強いてきた国の末路と言う他ない。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウへのパトリオットミサイル移転、数日・週間以内に決

ワールド

トランプ氏、ウクライナにパトリオット供与表明 対ロ

ビジネス

ECB、米関税で難しい舵取り 7月は金利据え置きの

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、米CPIに注目 新たな関税
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 2
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story