コラム

民衆法廷「中国は犯罪国家」と断罪 「良心の囚人」からの強制臓器収奪は今も続いている

2019年06月19日(水)16時15分

約7カ月たっても勾留は続き、それから2~3カ月後、友人は釈放され、インドに帰国した。中国の収容所でHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染し、エイズ(後天性免疫不全症候群)を発症していた。カリミ氏の無実を証明するため、友人はインド当局に申し出て、カリミ氏が偽造に関与したと証言するよう拷問を受けたという宣誓供述ビデオを作成した。

にもかかわらず2005年、カリミ氏は主犯扱いされ、終身刑を言い渡された。インドに送り返された友人の罪を問うことができなくなったからだ。友人の宣誓供述ビデオは無視された。それから4年後、スウェーデンに移送され、最終的にカリミ氏が釈放されたのは2015年になってからだ。

カリミ氏は「中国ではすべての罪状を受け入れなければ、家族との面会も移送も許されない」と振り返る。

カリミ氏が勾留されていた古い収容所の処刑場は1階にあった。処刑時間は通常、午前5時だった。夜の11時や12時になると何人かの囚人が悲鳴を上げ始めた。彼らが処刑されるのはみんな、知っていた。

カリミ氏は床を引きずられていく囚人の苦悶の表情が忘れられない。中でもショックだったのは囚人が別の囚人を引きずっていく役割を負わされていたことだ。7キロはある鎖や手かせ、足かせでつながれた囚人が床の上を引きずられていく。引きずっていく囚人も翌日には処刑される運命だと聞かされた。

病気の囚人だけが生き残る

後に処刑された中国共産党幹部と同房になったことがある。共産党は党員を処刑に立ち会わせた。もし共産党を裏切れば、どんな最期を遂げるのかという見せしめのためだった。恐怖が支配していた。

臓器収奪については囚人仲間が教えてくれた。看守は口にしないものの周知の事実だった。カリミ氏に英語の通訳をしてくれていた台湾人の囚人は「とにかく彼らは犯罪者だ。処刑されたら臓器は必要でなくなる。だから何も問題ないんだ」と説明した。

「処刑された囚人は火葬される。遺族が受け取るのは遺灰だけだ。臓器が取り出されていようがいまいが決して問題にはならない。とにかく囚人は処刑される運命にある。死人に生きている臓器は必要ない。だから収奪して他の人の役に立てているわけさ」

またある時、その囚人がこう言った。「最近、法輪功の24~25人のグループが処刑された。1人だけ処刑を免れた。病気だったからね」。カリミ氏は「どうして」と尋ねた。「もし囚人が病気なら臓器は使えないからだよ」という答えが返ってきた。

公聴会ではカリミ氏のほか、肉体的・精神的な拷問を受け、臓器収奪に備えたとみられる血液検査や内臓のスキャン検査を受けた法輪功の女性学習者や、腎臓や心臓、肺のメディカルチェックを受けたウイグル族の男性も証言した。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com

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