コラム

オーストリアで「世界最年少」首相誕生へ 31歳が唱えるニューポリティックス

2017年10月16日(月)13時00分

しかし多文化の移民都市ロンドンに比べると移民と言っても欧州からが多く、どうしてもモノカラーに見えてしまう。

投票が締め切られた午後5時すぎ、オーストリアの公共放送ORFが開票予測を流すと、国民党の会場の音楽ホールは歓声に包まれた。チーム・クルツに参加して選挙運動を手伝った若者の中には15歳の少年もいた。

kimura171016-kurz03.jpg

国民党勝利に歓声を上げるチーム・クルツの若者(筆者撮影)

2日間で顔見知りになった司会者にステージから「マサトが日本から取材に来ているよ」と紹介され、赤面した。フランスの国民戦線や「ドイツのための選択肢」の選挙集会も取材したが、クルツや支持者に極右特有の暗さは全く見当たらない。

社会民主党が公共住宅や国営産業、労働組合に、国民党が農業、官僚、財界、教会に影響力を持つという戦後政治の構造はEU統合によって完全に崩壊した。クルツは財界・労組、官僚の中心に位置する政治をまず変えようとしている。

医療ビジネスのマーケティングをしているトーマス・ハートルさん(28)もチーム・クルツに参加した1人。

「堅苦しくて古臭い政治を一新するため、クルツは国民党のカラーを伝統の黒からライトブルーに変えた。社会民主党との連立に有権者はうんざりしている。僕の地元から19歳の候補者が立候補した。これまでの国民党では考えられなかったことだ。自由党との連立もEUから非難された時代とは違う」

kimura171016-kurz04.jpg

世界中の注目を集めるクルツ(筆者撮影)

チーム・クルツは、政治をスタートアップにしたフランスのエマニュエル・マクロン大統領の選挙チームに似ている。原動力はヤング・エグゼクティブ。ライトブルーのTシャツ、そしてスーツにノータイ、スリムパンツが定番。背広にネクタイはもう古い。

しかし、ニューポリティックスの実力が問われるのはこれからだ。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、高市首相の台湾発言撤回要求 国連総長に書簡

ワールド

MAGA派グリーン議員、来年1月の辞職表明 トラン

ワールド

アングル:動き出したECB次期執行部人事、多様性欠

ビジネス

米国株式市場=ダウ493ドル高、12月利下げ観測で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 7
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story