コラム

122兆円の予算案の行方...なぜ高市首相は「積極財政」から「緊縮財政」へと転向したのか?

2026年01月15日(木)17時38分
高市首相の予算案への財政悪化懸念は間違いか

KAZUKI OISHIーSIPA USAーREUTERS

<衆院解散によって年度内の成立が難しくなるとされる予算案だが、その内容を整理すると多くのメディアが報じた「財政悪化懸念が増大」とは別の現実が見えてくる>

高市政権が取りまとめた2026年度予算案への「意外感」が広がっている。高市氏は積極財政を掲げて総理大臣に就任したが、実際に出てきた予算案はむしろ緊縮財政に近い内容だったからである。

閣議決定された予算案は、一般会計総額122兆3092億円と前年度当初予算を上回った。多くのメディアは財政悪化懸念が増大したと報じているが現実は少々異なる。


確かに規模では前年を上回ったものの、増えた金額は7兆円で伸び率に換算すると6.2%にとどまっている。日本経済はインフレの最中であり、直近の物価上昇率は3%程度であることを考えると、実質的な伸び率は3%と考えるのが妥当だろう。

しかも増大要因のほとんどは社会保障費、地方交付税、国債費など義務的経費であり、いわゆる景気拡大を狙った積極財政が要因ではない。

さらに注目すべきなのは国債の発行額である。確かに新規国債の発行額は増えたものの、伸び率は3.3%と、物価上昇率に近い数字となっている。というよりも、新規国債発行額をあえて物価上昇率の範囲に抑えた予算案にしたというのが実際のところだろう。

つまり、今回の予算案は、積極財政で景気を拡大する方向性ではなく、財政健全化に重きを置いたものと考えてよい。言い方を変えれば、財政健全化を主張し、数字のつじつま合わせを得意とする財務省にかなり配慮した予算案ということになる。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルがイランに新たな攻撃、「米と交渉せず」と

ビジネス

一部の中東石油・燃料価格評価を停止、イラン紛争受け

ビジネス

中東情勢の悪化、利上げ継続方針に変化はない=氷見野

ビジネス

英中銀次期副総裁にバークレイ幹部起用、元規制当局の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    ドバイの空港・ホテルに被害 イランが湾岸諸国に報復攻撃、民間インフラも対象に
  • 4
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作…
  • 5
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 6
    「本当にテイラー?」「メイクの力が大きい...」テイ…
  • 7
    【銘柄】「三菱重工業」の株価上昇はどこまで続く...…
  • 8
    「高市大勝」に中国人が見せた意外な反応
  • 9
    【銘柄】「ファナック」は新時代の主役か...フィジカ…
  • 10
    米・イスラエルの「イラン攻撃」受け、航空各社が中…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 4
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 5
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 6
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 7
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 8
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 9
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作…
  • 10
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story