コラム

「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること

2025年09月11日(木)18時02分

再開発ブームの終焉で不動産価格は暴落する?

金利が上がれば、こうしたマネーの無制限な供給に歯止めがかかるため、不動産開発の環境は一気に悪化する。加えて、大規模緩和策の弊害であるインフレが重くのしかかるようになり、土地や資材価格の高騰で採算が合わなくなったというのが現実だろう。

実需面でのバランス崩壊という要因もある。過剰なマネーが不動産に集中した結果、都市部では需要以上の施設が供給された。これまでは、オフィスが大量供給されても、よりスペックの低いビルからテナントを奪うという形で何とかテナントを確保できたが、今度は顧客を奪われた古いビルの経営が成り立たなくなってしまう。


いずれにせよ、経済の原理原則として需要以上の施設を造ることは不可能であり、市場は完全に飽和したと言ってよいだろう。日本経済は基本的に成長しておらず、オフィス需要が今後、大幅に増える可能性は低く、デベロッパーもこれ以上のリスクを取ることはできない。

では、再開発ブームの終焉によって不動産市場が一気に冷え込み、価格が暴落するのかというとそうはならない可能性が高い。理由は先にも説明したように、一連の再開発ブームは、大規模緩和策によるマネーの大量供給が原因であり、金融緩和の副作用の1つがインフレだからである。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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