コラム

インフレと金利上昇で揺れる不動産市場...「持ち家」「賃貸」論争に変化の兆し?

2024年08月30日(金)14時00分

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バンコク中心部の高級コンドミニアムの内見に訪れた中国人の顧客(2023年4月) CHALINEE THIRASUPAーREUTERS

銀行の融資は土地を担保にすることが当然視され、土地は何よりも価値の高い資産として認識された。80年代のバブル時に異様なまでに土地価格が高騰したのも、不動産に対するある種の信仰があったからにほかならない。だが、バブル崩壊とともに日本の土地神話は完全に消滅。土地を担保とした不良債権の処理に10年以上もかかる状況となり、日本人の土地への認識は大きく変わった。

安倍政権下で再び上昇モード

土地の値段が上がらず、家賃も低迷していたこともあり、住宅は所有せず一生賃貸のほうがリーズナブルであるとの価値観も浸透してきた。こうした考え方がスタンダードになると思われた矢先に実施されたのが安倍政権による大規模緩和策である。


景気回復を目的に日銀が大量の国債を買い入れ、市場には大量のマネーがあふれ出たが、銀行は良い融資先を見つけることができず、余剰マネーの大半は不動産開発に向かった。その結果、30年にわたって低迷が続いた日本の不動産市場は一転、本格的な上昇モードに入った。

整理すると、戦後日本における不動産価格は、終戦後のハイパーインフレを起点に継続的な上昇フェーズが続き、バブル崩壊をきっかけに長期の上昇相場が終了。そして大規模緩和策の結果、30年の時を経て、再び長期上昇フェーズに入ろうとしていると解釈できる。

大規模緩和策の影響が大きいという点では、日本は先進各国の中で突出した状況にあるものの、余剰マネーが不動産に向かうという現象は日本だけのものではない。世界各地で不動産価格は上昇を続けており、庶民の生活水準と乖離する問題は各国で指摘されている。

アメリカの不動産価格は約10年で2倍近い水準まで高騰しており、特にコロナ後には価格が急上昇した。これまでは所得の伸びが不動産価格の伸びに追い付いており、国民は何とか不動産を購入することができたが、コロナ後は所得の伸びを不動産価格の伸びが上回っており、日本と同様、住宅が手に入りにくい状態が慢性化しつつある。

アメリカ最大の都市であるニューヨークではかつて、マンハッタンと呼ばれる都心区域の不動産価格が極めて高く、ブルックリンやクイーンズなど(東京では江東区や大田区のイメージに近い)周辺地域の価格は安いという、明確なすみ分けができていた。マンハッタンの中でも北部のハーレムなど治安が悪かった地域では、やはり価格は抑えられていた。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

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