コラム

安倍外交、活発に外遊しても世界に認められない...「見える化」の処方箋

2019年12月24日(火)16時30分

歴代最長の安倍政権だがその外交は世界の中で目立っていない KIM KYUNG HOON-REUTERS

<世界の認知度が低いままの日本は、2020年の無秩序化する世界でどんな外交をするべきか。アメリカ、中国、韓国、そして北朝鮮――。難題を乗り越え、存在感を示す正念場が訪れる。本誌年末合併号「ISSUES 2020」特集より>

外交は国際情勢の中で進むもの。自分の意思で実現できることは限られる。
2019123120200107issue_cover200.jpg
2020年の国際情勢を特徴付けるのは、何といっても11月の米大統領選だ。普通なら、大統領選前の世界情勢は数カ月休止状態になる。だが、ドナルド・トランプ米大統領は全世界を自分の再選に使おうと、中国、ロシア、北朝鮮などを相手に何をやるか分からない。世界の枠組みを大きく変えてしまうかもしれない。

トランプがいなくとも、今や世界中で情勢が液状化し、外交の足場が不安定になっている。そして、アメリカが内向き傾向を強めるなか、日本が自力で対処しなければならない局面も増えている。

こうしたなかでは、情勢に流されないよう何を守り、もり立てていかねばならないのか、心づもりが必要だ。筆者に言わせればそれは、まず「国家」より人間を前面に立てた民主主義、そして生活水準の維持と向上、その上で国家としての矜持(きょうじ)発揮、となる。

就任以来、安倍晋三首相が活発な外交を展開していながら、世界のメディアで日本はほぼ埋没したままだが、それは日本がアメリカの手下で自分では何もできない、しないと思われているからだ。理念を打ち出しPKO参加や経済援助など目に見えることをしていけば、日本を「見える化」することもできるだろう。

2020年、対米関係では米軍に対する「思いやり予算」の増額(現在の2000億円弱を4倍以上にしろと言っている)交渉が始まる。アメリカが開発した中距離ミサイルの日本配備の是非をめぐる議論も起きよう。いずれも、同盟の枠組みを揺るがす大問題だ。そしてトランプが大統領選を念頭にドル安・円高を仕掛けてくることもあり得る。

「国賓待遇」は返事次第

対米関係が悪化した中国が日本にすり寄ってきているが、それは種々の問題で日本の立場を受け入れてもらう好機と言える。香港、台湾について日本の立場をもっと「見える化」するべきだろう。習近平(シー・チンピン)国家主席を国賓待遇にするかどうかは、その返事次第だ。

韓国とは「徴用工」補償問題が火を噴くかもしれないが、それより北朝鮮に対するアメリカの出方のほうがマグニチュードは大きい。アメリカが武力行使に踏み切る場合、逆に北朝鮮の核保有を認めたまま平和条約を結ぶ場合のいずれも朝鮮半島情勢は激変する。

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米・イラン、ここ数日で直接対話再開か アラグチ外相

ビジネス

再送米国株式市場=急反発、AI関連銘柄が高い 原油

ワールド

IEA、備蓄追加放出も ホルムズ海峡再開が鍵=事務

ワールド

IEA、備蓄追加放出も ホルムズ海峡再開が鍵=事務
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったのか?
  • 3
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在の価値でどれくらい? 誰が何のために埋めた?
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 6
    「筋肉はモッツァレラと同じ」...なぜウォーミングア…
  • 7
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 8
    幼い子供たちの「おぞましい変化」を克明に記録...「…
  • 9
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 9
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story