コラム

米中貿易戦争は出来レース? トランプと習は手打ちする

2018年04月21日(土)12時00分

アメリカの課税措置が実施されて、中国の貿易黒字が減少すると、中国は急速な経済成長を支えてきた原資を大きく失う。00年代は年4000億ドルにも上る経常黒字と外国からの直接投資を元に替え、不動産・インフラ投資で何倍にも転がし膨らませていった。これこそが中国の高度成長の実態だが、その「パン種」が大きく失われてしまうのだ。

中国の対米貿易黒字は、中国の全貿易黒字(16年で約5107億ドル)の49%。香港の対米貿易黒字を加えれば50%を上回るほどだ。

19世紀以来、アメリカは西進してその経済を大きくしてきた。西進の究極目標である中国の富をつぶすようなことはするまい。貿易赤字の問題は、北朝鮮の核開発阻止や台湾の独立性維持を含めた、米中間の広い取引の一要素として扱われていく。いずれも最終決着がつくはずもない。当面のつじつまを合わせるだけで、中間的合意が果てしなく繰り返される展開になる。

進行中のトランプのロシアゲート捜査やシリアをめぐるロシアとの対立などは、そうしたアジアの諸問題を一時棚上げにしてしまうかもしれない。

<本誌2018年4月24日号掲載>

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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