コラム

消費低迷の特効薬は消費税減税だ

2016年03月02日(水)17時25分

 先週末(2月28日)に閉幕した上海G20の共同声明を見ると、成長や金融の安定の強化のために金融・財政・構造改革という全ての政策手段を用いること、特に機動的に財政政策を実施する旨が述べられている。これは金融政策に過度に依存した現在の政策状況を転換することが必要という表明であって、金融政策が無効であることを意味しない。そして中国経済の先行き懸念、資源輸出国を中心とする新興国の経済停滞の深刻化が進む中、世界経済のGDP成長率の下方修正が相次いでおり、資源輸入国、特に先進国の総需要喚起も期待されている。5月26日・27日に開催される「G7伊勢志摩サミット」でも、内需拡大のために先進国が行うべき具体策が議論・決定されるだろうし、又そうでなくては困る。

 これまで述べてきたように「消費の底割れ」はリーマン・ショック以来である。そして「消費の底割れ」が実質GDPや名目GDPの拡大を阻害している。日経平均の動きに目を転じてみても、年初来の株価の落ち込みは、同様に年初から株価下落が始まった1990年(バブル崩壊)、1998年(アジア通貨危機、金融危機)、2008年(リーマン・ショック)、2014年(消費税増税)のいずれの時期と比較しても悪化が進んでいる。「いついかなる状況下でも消費税率を10%に引き上げることが必要だ」という主張は非合理としか言いようがないが、現下の状況は、まさに安倍首相が消費税増税の再延期に際して述べた必要条件を満たしつつあるのだ。

 名目GDP600兆円を達成するという「名目GDP水準目標政策」を安倍政権が真剣に達成するつもりがあるのならば、消費税増税は延期ではなく凍結すべきであり、かつ消費税減税に踏み込むべきだ。消費税減税を行うために乗り越えるべきハードルは高いだろうが、消費拡大の特効薬であることは確かである。それこそが日本経済にとっても、また世界経済にとっても必要な政策だろう。

プロフィール

片岡剛士

三菱UFJリサーチ&コンサルティング、経済・社会政策部主任研究員
1972年生まれ。1996年慶應義塾大学卒業後、三和総合研究所入社。2001年慶應義塾大学大学院商学研究科修士課程修了、2005年より現職。早稲田大学経済学研究科非常勤講師、参議院第二特別調査室客員調査員、会計検査院特別研究職を兼務。専門は応用計量経済学、マクロ経済学、経済政策論。著作に『日本の「失われた20年」――デフレを超える経済政策に向けて』(藤原書店、第4回河上肇賞本賞受賞)、「日本経済はなぜ浮上しないのか アベノミクス第2ステージへの論点」(幻冬舎)など多数

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