コラム

注目の新党はあえなく空中分解......韓国で第3党が成功しない理由

2024年02月27日(火)12時20分

中小政党に不利な選挙制度

では、どうして韓国の第3勢力は成功しないのだろうか。その最大の理由は、この国が大統領制と小選挙区・比例選挙区併用制という中小政党に不利な制度を採用しているからだ。

現状では、両党とも比例選挙区で議席を得るため最低必要な小選挙区での5議席獲得は難しく、同じく議席獲得条件である得票率3%以上も微妙。小選挙区で勝利するためには、政党に一定以上の規模が必要であり、勢い第3勢力は選挙前に統合を強いられる。2月に入って行われた李俊錫新党と李洛淵新党の統合はその典型である。

しかし、元来が左右の2大政党から分かれた彼らにはそれぞれの特色があり、異なる系統の勢力との合流は逆にその特色を失わせ、党内の路線対立を激化させる。2大政党は彼らを選挙だけを目的にした「野合」勢力だとして批判し、こうして統合に統合を重ねるほど支持率が失墜する罠に落ちる。国民は第3勢力に失望し、2大政党のどちらかを「消極的に」選択することを余儀なくされる――。そして、今回も新党は合流からわずか11日で解消になった。

プロフィール

木村幹

1966年大阪府生まれ。神戸大学大学院国際協力研究科教授。また、NPO法人汎太平洋フォーラム理事長。専門は比較政治学、朝鮮半島地域研究。最新刊に『韓国愛憎-激変する隣国と私の30年』。他に『歴史認識はどう語られてきたか』、『平成時代の日韓関係』(共著)、『日韓歴史認識問題とは何か』(読売・吉野作造賞)、『韓国における「権威主義的」体制の成立』(サントリー学芸賞)、『朝鮮/韓国ナショナリズムと「小国」意識』(アジア・太平洋賞)、『高宗・閔妃』など。


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