コラム

築150年の家に住むと何が起こるのか...ビクトリア朝時代の住宅の窓をめぐる苦労

2025年06月26日(木)17時03分
ロンドンのビクトリア朝時代の住宅

ロンドンのビクトリア朝時代の住宅(写真の住宅は本文とは関係ありません) ALEX SEGRE/GETTY IMAGES

<窓の不具合から見えるイギリス生活の一面と、新しい物が優れているとは限らない現実>

今から窓の話をしようとするなら、多分その理由を説明した方がいいかもしれない。

まず、日本人がほとんど体験することのないイギリス生活の一面をのぞき見ることができる――築100年とか200年の家に住むという経験だ。


次に、これは「より新しい物が常に優れているとは限らない」という僕の持論の1つに立ち返ることになる。実際のところ、古い方がしばしば優れていたりする。

僕の家はビクトリア朝時代に建てられたもので、僕の知る限り、正面の4つの窓と側面の小さな窓は新築当初から付いていた。だから150年くらいたっている可能性がある。そして、それらは十分に機能する。

うち1つは1年のうち6カ月くらいは開けられないが、10月から3月の間は外が寒くて開けたいとも思わないので、大きな問題ではない。

この窓に何が起こっているかというと、木製の窓枠に少し雨がしみ込んで膨らみ、閉じた状態で強く固定されてしまうということ。春になると空気が乾燥しはじめ、窓を開けさえすれば換気されてほんの1、2日ですっかり乾くだろうから、僕はほんのわずかでもいいから開けてみようと試みる。

およそ2週間の間、僕の家の前を通りかかった人は、僕が一日に数分間、窓を開けようと格闘しては失敗するのを目にするだろう。笑える姿なのは間違いない。いつか窓が開くその日が、僕の家の正式な春の始まりだ。だからこれは毎年発生するささやかな不具合であり、5つの窓のうち1つだけの問題にとどまっている。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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