コラム

「コロナ後」ロンドンで(細かすぎる)再発見

2022年04月27日(水)17時50分
ビッグ・ベン

ロンドンに再びあふれ出した観光客は、ビッグ・ベンの撮影スポットでいかにもイギリス的な行列を作っている(4月11日) JOHN SIBLEY-REUTERS

<人々がまるでコロナは完全に終わったかのように振る舞っているロンドンを散策すると、見過ごしていた小さな変化がそこかしこに。CDやDVDはいつの間にか廃れ、あんなに盛り上がったエコ機運は勢いを失い、改修工事終了のビッグ・ベンよりイギリスらしい光景が......>

いつもの日課からちょっと外れてみることで、何かに気付かされることがある。先週過ごしたロンドンで、僕はいくつか興味深い事実に気付いた。どれも厳密には「ニュース価値」があるものではないが、統一感ナシの見解の数々を羅列するのをお許しいただきたい。

まずは、チャリティーショップ(慈善団体などが運営するリサイクル品などを扱う店)でDVDやCDがもはや売られていないことに気付いて驚いた(でもレコードや本は売っている)。だから、世に登場した当時は「未来的」に見えていた新テクノロジーよりも、「古いテクノロジー」のほうが長く生き延びたことになる。

思いがけない品々に出会えるから、僕はロンドンでチャリティーショップ巡りをするのが好きだ。ロンドンにはさまざまな国の出身者や中にはかなりの金持ちなど、あらゆるタイプの人々が住んでいる。だから僕の住むエセックス州ではお目にかかれないような、好奇心をそそられたり価値の高い品々が、ここロンドンのチャリティーショップには寄付されて置かれていることが多々ある。

でも、DVDやCDの中古品市場は崩壊してしまった。これらはあまりに多くの人が寄付してあまりに買う人が少ないから、1枚2ポンドで売られていたのがやがて1枚1ポンドになり、やがては「4枚で1ポンド」が普通になっていった。

1カ月前に僕は、DVDを3枚選んで、見たいと思う4枚目がないかと探すのに20分も費やしたことを思い出す。別に3枚で買っても良かったのだから、ばかげた話だ。僕が25ペンス分を無駄にするのを惜しんでいる、というわけではない......。僕はチャリティーショップでCDを買うのも楽しんでいた。あまりに安いので、面白そうと思って普段は手に取らないような物を選んだら、それが驚くような掘り出し物だったりすることがあったからだ。もしも気に入らないものだったら、再び店に寄付することだってできた。でも今や、これらDVDやCDは単に売り場のスペースを費やす価値さえなくなり、受け取ってもらうこともできない。1つの時代の終わり、あるいは以前の時代への回帰? 僕はまだ古いレコードプレーヤーを持っている......。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

LSEG、第1四半期決算は市場予想と一致 MSとの

ワールド

北朝鮮製武器輸送したロシア船、中国の港に停泊 衛星

ビジネス

大和証G、1―3月期経常利益は84%増 「4月も順

ビジネス

ソフトバンク、9月末の株主対象に株式10分割 株主
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story