コラム

記者から首相補佐官へ──「華麗なる転身」の落とし前をどうつけるのか

2020年11月12日(木)18時00分

本書の中で柿崎はこんなことを書いている。「安倍晋三首相は国家主義、全体主義を目指しているわけではないだろう。しかし、その思考、手法がいずれそんな事態を招来する可能性があることを指摘した。(中略)情報公開制度が形骸化する中、特定秘密保護法が施行され、マイナンバー制も始まった。情報をめぐる国家と国民の非対称性はこれまでになく強まっている。かつてのような強制的な形ではない、新しい形で国家主義が胎動しつつあるように感じる」

この見立ては私も賛同する。だからこそ問いたい。その胎動の何割かは確実に菅が担ってきたものではないか。事実、就任早々に勃発した日本学術会議をめぐる騒動でも明らかになったように、菅はなぜ6人だけ任命拒否をしたのかという理由を、明示的に語らないという形で乗り切ろうとしている。菅自身が、安倍政権を継いで情報の非対称性を最大に利用している張本人だ。私はこうした批判に柿崎自身がもっと答える必要があると思う。

本やテレビの言葉だけに踊らされるのはやはり危うい。大切なのは何を言ったか、何を書いたかよりも、どう行動するかである。行動の落とし前は、本人にしかつけられないのだから。

<本誌2020年10月27日号掲載>

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プロフィール

石戸 諭

(いしど・さとる)
記者/ノンフィクションライター。1984年生まれ、東京都出身。立命館大学卒業後、毎日新聞などを経て2018 年に独立。本誌の特集「百田尚樹現象」で2020年の「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞作品賞」を、月刊文藝春秋掲載の「『自粛警察』の正体──小市民が弾圧者に変わるとき」で2021年のPEPジャーナリズム大賞受賞。著書に『リスクと生きる、死者と生きる』(亜紀書房)、『ルポ 百田尚樹現象――愛国ポピュリズムの現在地』(小学館)、『ニュースの未来』 (光文社新書)など

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