ニュース速報
ワールド

情報BOX:「核オプション」の反威圧措置、EUは米国に行使できるのか

2026年01月20日(火)17時23分

写真は米国とEUの旗のイメージ。2025年4月撮影。REUTERS/Dado Ruvic

[‍ブリュッセル 19日 ロイター] - フランスは‌19日、デンマーク領グリーンランドの領有を目指すトランプ米大統領が北大西洋条約機構(NATO)加盟国に追加関税を課するなら、米国のサービス輸出を‌対象に欧州連合(EU)が「反威​圧措置(ACI)」を行使する準備をするべきだとの見解を表明した。

<これまでの経緯>

米国の安全保障を理由にグリーンランド購入を目指すトランプ氏は17日、反対する欧州8カ国に追加関税を適用する意向を示した。

これを受けEU各国は報復措置を取りまとめており、‌その中には930億ユーロ相当の対米関税を発動する、あるいは米国の巨大テック企業などが提供するサービスへの規制や投資制限を行うACIの発動が含まれている。

2023年に発効したACIは、これまで発動されたことはない。主な目的は「抑止」にあり、使われないのが理想という意味で「核オプション」と見なす向きが多い。

<想定される具体的な対応>

ACIはEU加盟27カ国が、加盟国に政策変更を強要するような経済的威圧に対抗する手段として認められており、単なる米国製品への報復関税よりも対応余地がずっと大きい​。

モノとサービスに適用可能な対応策としては以下の項目が記⁠されている。

*輸出入製品への割当枠やライセンスを通じた規制。

*EU域内の公共調達‍入札(年間約2兆ユーロ=2兆3000億ドル相当)に対する制限。建設や防衛装備品調達などの入札で米国製品・サービスが契約内容の50%を超える場合にそれらの応札を排除、あるいは米企業の応札に対してペナルティーとしてスコア調整を加えられる。

*EUに対して米国が貿易黒字を持つサービス‍分野への措置。これにはアマゾン・ドット・コム やマイクロソフト 、ネッ‍トフリ‌ックス 、ウーバー などのデジタルサービス提供事業者も含まれる‍。

*米国からの直接投資制限。米国のEU向け直接投資は世界最大だ。

*知的財産権保護、金融サービス市場へのアクセス、EU域内での食品ないし化学製品販売に関する規制。

EUはこれらのうち、第三国の威圧的行動を阻止し、痛手を回復する上で最も有効になりそうな手段を選択することが想定されている。

<ACI⁠発動の仕組み>

ACIは2021年、第1次トランプ政権や中国が通商を政治的手段として利用しているというEU内の批判を受けて提案された。

EU欧州委員会⁠は法令に基づき、対象事案を最大4カ月かけ‍て調査し「経済的威圧」だと認定すれば、加盟各国に諮り、各国がさらに8─10週間で最終確認する。

最終確認の要件は加盟国の過半数の承認で、報復関税よりもハードルが高い。

通​常は、その後に欧州委が威圧していると認定した外国と交渉して解決を目指す。不調に終わった場合、再び加盟国の承認を経てACIの対応策を発動する。発動は3カ月以内と義務づけられている。

全体の手続きが完了するまでには数カ月から1年かかる可能性がある。

ロイター
Copyright (C) 2026 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

英政府、インド洋要衝の主権移譲協定を擁護 トランプ

ビジネス

ユーロ圏の経常黒字、11月は86億ユーロ 約3年ぶ

ビジネス

英労働市場、11月の予算案発表前に減速 賃金も伸び

ビジネス

インタビュー:中国の対日レアアース規制、長期化の可
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「耳の中に何かいる...」海で男性の耳に「まさかの生物」が侵入、恐怖映像と「意外な対処法」がSNSで話題に
  • 2
    「死ぬところだった...」旅行先で現地の子供に「超危険生物」を手渡された男性、「恐怖の動画」にSNS震撼
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 5
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 6
    中国、欧米の一流メディアになりすまして大規模な影…
  • 7
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 8
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 9
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 10
    トランプが「NATOのアメリカ離れ」を加速させている…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 5
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 6
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 7
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 10
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中