インタビュー:中国の対日レアアース規制、長期化の可能性低い=日本総研・三浦氏
写真は中国と日本の国旗。2022年7月撮影。REUTERS/Dado Ruvic
Yusuke Ogawa
[東京 20日 ロイター] - 高市早苗首相の台湾有事を巡る国会答弁を背景に、中国の対日レアアース(希土類)規制の強化が伝わってから2週間が経過した。輸出制限措置の行方について、日本総研の三浦有史・主席研究員に聞いた。日本貿易振興会(現日本貿易振興機構=ジェトロ)出身の三浦氏は中国経済を専門とし、『脱「中国依存」は可能か』などの著書を持つ。
三浦氏は「あえて規制の運用をあいまいにし、日本側に『いつ供給が止まるかわからない』という不安を植え付けようとしている」と指摘した上で、「全面的な制限を続ければ、他国での鉱山開発や代替技術への投資が進み、レアアース分野でのシェア低下を招きかねない。対日規制が長期化する可能性は低く、中国側も早晩落としどころを探ってくるだろう」と話した。
――輸出規制の現状は。
「1月6日に軍民両用品目における対日輸出管理の強化が発表されたが、詳細な内容はまだ明らかになっていない。中国当局が(レアアースの用途や最終販売先などに関する)書類の審査を厳格化しているとの報道があったが、もし全面的な輸出規制なら、様々な業界から悲鳴が上がっているはずだ。現時点では、物流を一部で停滞させている段階にとどまっているとみられる」
「中国側の狙いは明白だ。台湾問題という『核心中の核心』に触れた首相発言を巡り、産業界を通じて日本政府に揺さぶりをかけることにある。対米関税交渉でレアアースを外交カードに使った際、一定の対話を引き出せた成功体験もある。今回は供給を完全に断つのではなく、あえて規制の運用をあいまいにすることで、日本側に『いつ供給が止まるかわからない』という不安を植え付けようとしている」
――中国のレアアースの支配力は。
「採掘による生産工程において、中国の世界シェアは徐々に低下している。それでも今なお約7割を占めるなど圧倒的な存在感だ。より顕著なのは精製工程で、国際エネルギー機関(IEA)によれば、中国のシェアは9割超に達する。レアアース鉱石の多くは精製時に大量の放射性廃棄物を出すが、中国は人件費が安く環境規制も緩いことから処理コストが低く済むため、各国が依存している。(かつてレアアース大国だった)米国も現在はわずか1%のシェアしか持たない」
――今後の輸出規制の見通しは。
「強力な支配力を持つとはいえ、対日規制が長期化する可能性は低いとみている。中国が全面的な制限を続ければ、他国での鉱山開発や代替技術への投資が世界的に進み、長期的に中国のシェア低下を招くためだ。レアアース分野での影響力を維持するには、物資を安価に提供し続ける必要がある。
また、中国ではレアアースの密輸が以前から問題視されており、輸出規制によって一段と深刻化する恐れがある。実際、レアメタル(希少金属)のアンチモンの対米輸出を禁止した際は、タイなどの第三国を通じた迂回取引が活発になった」
「レアアースの調達を巡っては、中国自身の状況も実は盤石ではない。特に(自動車用モーターなどに使われる)重レアアースに限っては、国内の電気自動車(EV)産業の拡大に伴って、輸入量が輸出量を上回る『純輸入国』に転じている。安定的な貿易体制を望んでいるのは彼らも同じだ。
昨年春に米国による半導体規制への対抗措置としてのレアアースを活用した際も、実際に輸出量を大幅に減らしたのは3か月程度だった。早晩、日本政府に何らかの譲歩を引き出す形で落としどころを探ってくると予想する。中国の立場や戦略をふまえれば、日本にとって、備蓄の積み増しといった対策が有効だろう」
(聞き手・小川悠介 編集:橋本浩)





