ニュース速報
ワールド

焦点:ベネズエラ介入でMAGA逸脱、トランプ氏は「ネオコン化」か

2026年01月04日(日)14時59分

 ベネズエラを攻撃し、その国で独裁政権を敷いていたマドゥロ大統領の身柄を拘束、さらにその国を一時的に運営するというトランプ米大統領の決定は、長年外交問題における他国の越権行為を批判し、外国との紛争に関与しないと表明していた同氏の顕著な方向転換を示す。3日、フロリダ州の私邸で記者会見するトランプ氏(2026年 ロイター/Jonathan Ernst)

Gram ‍Slattery Simon Lewis

[ワシントン/パームビーチ(フロリダ州) 3日 ロイター‌] - ベネズエラを攻撃し、その国で独裁政権を敷いていたマドゥロ大統領の身柄を拘束、さらにその国を一時的に運営するというトランプ米大統領の決定は、長年外交問題における他国の越権行為を批判し、外国との紛争に関与しないと表明していた同‌氏の顕著な方向転換を示す。

3日、作戦終了後の​記者会見でトランプ氏は「安全で適切かつ賢明な政権移行が完了するまで、われわれが運営する」と述べ、ベネズエラの政治と石油産業への継続的な関与を表明した。さらに「地上での部隊展開」の可能性も示唆した。これは、国内で政治的反発を引き起こす恐れがあり、歴代の大統領が避ける発言だ。

<不介入から介入へ>

「われわれは成功というものを、勝利する戦いだけでなく、われわれが終わらせる戦争、そしておそらく最も重‌要なのは、われわれが決して関与しない戦争によって評価することになる」。昨年1月の大統領就任式でトランプ氏は支持者らにこう語った。

しかしそれ以降、シリア、イラク、イラン、ナイジェリア、イエメン、ソマリアの標的を爆撃し、カリブ海と太平洋で「麻薬密輸船」とする数十隻を爆破。グリーンランドとパナマへの侵攻をほのめかしている。

そして今回のベネズエラへの作戦はトランプ氏にとって外国に対する最も攻撃的な軍事行動だ。

第2次トランプ政権におけるこうした展開は、トランプ氏が、物価や経済、医療といった有権者が重視するの国内問題に焦点を当てるだろうという一部共和党員の期待を裏切るものだ。

トランプ氏は3日の会見で、ベネズエラへの介入は自身の「米国第一(MAGA)」政策に沿ったものだと説明した。「われわれは良い隣人に囲まれたい。安定の中にいたい。エネルギーに囲まれたい」と述べ、ベネズ​エラの石油埋蔵量に言及した。

これに対し、MAGA派からは反論が出た。トランプ氏がMAGAから逸脱している⁠と批判し、同氏と袂を分かった共和党のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員は「MAGA支持者の多くが終わらせたいと思って(‍トランプ氏に)投票したことが起こった。われわれはなんと間違っていたことか」と交流サイト(SNS)に投稿した。同氏は今月、議員を辞職する。

<政治的のリスク>

トランプ氏の外交問題への傾斜は、11月の中間選挙に向けて民主党にトランプ氏批判を勢いづかせる。

上院民主党トップのシューマー院内総務は「はっきりさせたいのは、マドゥロが非合法な独裁者だということだ。だが議会の承認なしに、次に何が来るかについての連邦計画なしに軍事行動を開始することは無謀‍だ」と記者らに語った。

トランプ氏はウクライナやパレスチナ自治区ガザなど、いくつかの外国紛争を終結させるため‍に働き、ノ‌ーベル平和賞を受賞したいという意向を公にしている。しかし米国の軍事行動はより多くの公衆の注目を‍集める傾向があり、歴史的に大統領とその政党には政治的リスクとなってきた。

ベネズエラへの軍事行動は、実施前の段階で世論は否定的だった。昨年11月のロイター/イプソス調査では、マドゥロ政権を退陣させるための武力行使への支持は2割だった。

<ネオコン化の兆し>

トランプ氏は、自身を20世紀後半の共和党の伝統的保守主義に基づく「ネオコンサバティブ(ネオコン)」の対極に立つと位置づけてきた。しかし、同氏の外交政策はネオコンとされる前任者のそれとの類似が顕著にな⁠ってきている。

例えば、1983年のレーガン政権のグレナダ侵攻。当時、政権はグレナダ政府は非合法だと主張し軍事介入した。これはトランプのマドゥロ氏に関する主張と一緒だ。89年のブッシュ(父)政権でのパナマ侵攻は、麻薬密売罪⁠で米が指名手配していた独裁者ノリエガの排除が目的だった。マドゥロ‍氏も米国で複数の罪で起訴されている。

第1次トランプ政権でベネズエラ特使を務め、現在はシンクタンク、外交問題評議会のシニアフェローのエリオット・エイブラムス氏は、トランプ氏はマドゥロ氏を追放することで国内で政治的リスクを冒していると考えていないと話す。「マドゥロを排​除することでトランプ氏は正しいことをした。問題は、ベネズエラの民主主義支援において正しいことをするかどうかだ」と述べた。

オバマ政権(民主党)で外交政策顧問を務めたブレット・ブルーエン氏は、米国は今や複雑な移行プロセスの監督に巻き込まれる可能性があると指摘した。「この話の短いバージョンは見えない」とし、米国がベネズエラのみならずその近隣諸国に関連する新たな問題への対処も求められると指摘した。

ロイター
Copyright (C) 2026 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

エアバス、25年は793機納入 通年目標を達成=ブ

ワールド

スイスのバー火災、犠牲者全40人の身元確認 半数超

ワールド

トランプ氏、対コロンビア軍事作戦を警告 「良い考え

ワールド

スターマー英首相、短期政権交代は「国益に反する」と
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...強さを解放する鍵は「緊張」にあった
  • 2
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 3
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 4
    2026年の節目に問う 「めぐみの母がうらやましい」── …
  • 5
    ベネズエラ攻撃、独裁者拘束、同国を「運営」表明...…
  • 6
    野菜売り場は「必ず入り口付近」のスーパーマーケッ…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    「対テロ」を掲げて「政権転覆」へ?――トランプ介入…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 5
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 6
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 7
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 8
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 9
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 10
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中