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アングル:日銀会合後の円相場、金利反応が焦点に 相関は当面手探り

2025年12月11日(木)17時45分

写真は日銀の植田和男総裁。2025年9月、東京で撮影。REUTERS/Manami Yamada

Shinji Kitamura

[東京 11日 ロイター] - 米連邦公開市場委員会(FOMC)後の外国為替市場では、日銀が18─19日に開催する金融政策決定会合と金利市場の反応に注目が移った。長らく低水準にとどまっていた日本の国債金利が本格的に動き始め、その変動が円相場に強い影響を及ぼすようになったことが、一段と関心を高める要因となっているが、円金利と円相場の相関関係はまだはっきりしない。財政政策やキャリー取引の思惑なども絡んで、しばらく手探りが続きそうだ。

<米利下げでドル安、タカ派期待は空振り>

FOMC後の市場ではドル安が先行し、この日の東京市場で一時155.49円と2週間ぶり安値を更新した。市場予想ほどタカ派的でなかったとの見方がドル売りにつながった一方、イベント終了後の持ち高調整的な売買が下げを主導した可能性も指摘されている。市場では「政府機関閉鎖の影響で経済指標などに制約がある中で、今回のFOMCの政策金利見通しを素直に受け止めるのは難しい。今後の利下げパスが固まったとは言い難い」(みずほリサーチ&テクノロジーズ主任エコノミストの東深澤武史氏)との声が聞かれる。

米金利先物市場が織り込む1月会合での政策見通しは現在、据え置きが8割弱となっている。パウエル連邦準備理事会(FRB)議長は会見で「金融政策はあらかじめ決められた道筋にあるわけではなく、会合ごとに判断を下していく」との考えを強調した。

<円相場「金利ある未開の地」で戸惑い>

日銀が来週の会合で市場予想通り0.25%の利上げを実施すれば、政策金利は0.75%と1995年以来、およそ30年ぶりの高水準となる。それを見越した国債市場ではすでに、2年債利回りが18年ぶり、10年債が19年ぶり、30年債が1999年の発行開始以来最高と、歴史的な水準へ金利が上昇しており、その動きは円相場にも影響を及ぼしている。

ただ、安定的な影響とは言い難い。高金利通貨には上昇圧力がかかるのが一般的だが、金利上昇圧力が強まった先月以降、円相場は下げが加速した。ドルは一時157円後半と年初来高値に接近し、昨年夏につけた38年ぶり円安水準の161円台をうかがうような気配を見せた。

今月に入ると、金利高の地合いに変化はないまま、円は一転して上昇へ転じ、ドルは一時154円台まで反落した。

同じ金利上昇下で円相場の反応が変化したのは「金利上昇のストーリーが変わったため」(りそなホールディングスのシニアストラテジスト、井口慶一氏)とされる。前月に円安が進んだ場面では、高市政権下の財政拡張観測が超長期金利を中心に押し上げ、円にも財政悪化を懸念する売りが先行したが、日銀の12月利上げ観測が高まると短期金利の上昇が目立ち始め、円はセオリー通り上昇に転じた。   

JPモルガン・チェース銀行為替調査部長の棚瀬順哉氏は、低位安定が当たり前だった日本の金利が動き始め、債券市場が機能し始めたとみるが「金融政策や財政問題を反映して金利が変動した際、それがどう円相場に効くかは、まだあまりサンプルがない」として、その為替への影響を読み解くのは難しいと指摘する。

例えば、財政悪化に警鐘を鳴らすような金利上昇は「債券自警団」と呼ばれる。最近では2022年に英国で当時のトラス首相が大規模な財政出動を掲げた際、金利急騰と通貨急落が同時に発生し、市場に緊張が走った。債券市場が活性化したことで、今後は日本でも同様の事態が発生する可能性は否定しづらくなる。

<日米金利差3年ぶり低水準、キャリートレードに冷や水>

金利変動が通貨に与える影響は様々だが、円金利の急上昇は日米金利差の縮小にもつながるため、大きな金利差と高い流動性を誇るドル/円相場で人気のキャリートレードが下火になりやすい点も見逃せない。

キャリーは相場の変動そのものではなく、金利の低い円を売り、高いドルを買うことで金利差収入を狙うもの。キャリートレーダーと呼ばれる投資家が参照するとされる3カ月物の日米金利差は、23年秋の6%近い水準から縮小に歯止めがかからず、現在は3年ぶりの3%割れが目前に迫っている。

「ヘッジファンド勢は3カ月単位などでまとまった規模のキャリーポジションを組むところが少なくないが、この金利差では妙味があまり見いだせない」(大手銀のトレーダー)という。

米政府閉鎖の影響で発表が遅延している商品先物取引委員会(CFTC)のIMM通貨先物非商業部門の取り組み状況によると、最新の11月10日時点で、投機筋の円保有高は5万枚弱の買い越しだった。

高市政権発足前の10月半ば、円買いは3万枚台だった。ドルはその後11月前半にかけて155円付近へ上昇したが、少なくともこの局面で投機筋は、キャリーの円売りではなく、逆張りの円買いを仕掛けていたことが明らかになっている。

ロイター
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