アングル:米政府機関15万人超が今週退職、経験豊かな頭脳が流出

9月30日、トランプ米政権の早期退職制度に応じた15万人以上の職員が今週、連邦政府を去る。写真は政府職員の集会に参加する人々の影。ニューヨークで3月撮影(2025年 ロイター/Eduardo Munoz)
Tim Reid Courtney Rozen Valerie Volcovici Leah Douglas
[ワシントン 30日 ロイター] - トランプ米政権の早期退職制度に応じた15万人以上の職員が今週、連邦政府を去る。単年度として過去80年近くで最多の離職であり、専門知識の流出による損害が懸念されている。
9月まで給与を受け取れるプログラムを選択した職員の退職が、9月30日に正式に始まった。この早期退職制度は、トランプ大統領による連邦職員削減政策の柱。応じた職員には金銭的インセンティブを与える一方で、拒否した職員に解雇をちらつかせる仕組みになっている。
連邦政府人事局によると、多くの職員は数カ月前に所属機関を離れ、事実上、有給休暇を取っていた。
ミシガン大学フォード公共政策大学院のドン・モイニハン教授は、今週の大規模離職による最大の影響は多くの経験豊富な公務員の頭脳流出であり、取り戻すのが難しいと言う。「これらの人々が運営する政府プログラムを遂行するための深い知識と専門性を身につけるには何年もかかる。今、その知識の多くが失われようとしている」
政府の現職員と元職員、労働組合関係者ら12人への取材によると、専門知識の喪失により多くの機関で業務遂行や国民へのサービス提供が困難になっている。
ロイターの取材に応じた関係者によれば、悪影響を被っている政府活動は気象予報、食品安全、保健プログラム、宇宙プロジェクトなど広範囲に及ぶ。国立気象局では約200人が早期退職制度を利用し、予報関連設備の保守技術者や多くの経験豊富な気象学者が去った。同局職員組織のトム・フェイ法務ディレクターは「全国の事務所で大規模な混乱を引き起こしている」と語った。
これに対し、気象局を管轄する海洋大気庁(NOAA)のジャスミン・ブラックウェル報道官は、必要に応じて職を提供していると述べた。
民主党のクリントン元大統領は、第2次世界大戦後の政権として最多となる43万人以上(約20%)の政府職員削減を行ったが、これは8年間にわたる2期の任期全体での数字だ。
<NASAの人材流出>
航空宇宙局(NASA)職員約800人を代表する労組「国際専門技術者連盟」のマット・ビッグス会長によると、トランプ政権が1月と4月に提示した2回の早期退職制度に応じたNASA職員は4000人に上る。
ビッグス氏は「NASAは世界で最も優秀な技術者や航空宇宙科学者を失っており、その補充はなされていない」と述べた。
トランプ政権は早期退職制度、解雇、その他の退職奨励策を組み合わせて、今年末までに約30万人の職員を削減する見通しだ。政権の人事責任者が8月に発表した。これは連邦政府職員の12.5%に相当する。
<保健機関への打撃>
農務省の農業研究サービス(ARS)では、職員全体の約17%に当たる約1200人が早期退職制度に応じた。
ARS職員の一部を代表する労組「米政府職員ローカル3247」のイーサン・ロバーツ会長によると、退職した1人は穀物エレベーター内の真菌毒素の迅速検出を専門とする科学者であり、作物が汚染されているかどうかを見極めるのに貢献していたが、この仕事を受け継げる者はいない。世界保健機関(WHO)によれば、汚染された穀物は人や家畜に深刻な健康被害を与え、死に至らせることもある。
早期退職制度は疾病対策センター(CDC)や食品医薬品局(FDA)にも影響は及んでいる。
ケネディ厚生長官は3月、職員1万人を削減する計画で、うちFDA職員が3500人、CDC職員が2400人になると発表した。ある連邦政府職員は、CDCのタバコ予防・管理部門における職員の退職が影響し、FDAは中高生の喫煙データの更新に苦労していると明かした。