アングル:自民総裁選、調和重視でも日本株動意の可能性残す

自民党総裁選(4日投開票)が終盤を迎える中、日本株市場では候補者の独自色がみえにくく、結果が市場に与える影響は大きくならない、との見方が優勢になりつつある。2024年12月、東京証券取引所で撮影(2025年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
Noriyuki Hirata
[東京 1日 ロイター] - 自民党総裁選(4日投開票)が終盤を迎える中、日本株市場では候補者の独自色がみえにくく、結果が市場に与える影響は大きくならない、との見方が優勢になりつつある。少数与党下で調和重視の政策を進めざるを得ない現実があるからだ。ただ一方で、動意付く可能性が消えたわけではなく、状況によっては日経平均は4万6000円の史上最高値から4万3500円の下値まで予想する声が聞かれる。
<「高市期待」後退、米株高に追随できず>
1日の日経平均は4日続落した。このところの軟調地合いは、期末期初の需給要因や米政府閉鎖への警戒感もあったが、高市氏への期待が後退した面もあるだろうと大和証券の坪井裕豪日米株チーフストラテジストはみている。
9月入り後、日経平均は石破茂首相の退陣表明前後から上昇基調を強めていた。高市氏への期待を織り込む「高市トレード」に加え、米連邦準備理事会(FRB)による利下げの織り込みが進んだことが背景にある。
終値ベースの史上最高値をつけた25日までにS&P500が2.2%高だったのに対し、日経平均は7.1%高とこれを上回る上昇をみせた。ところがその後は、前日までにS&Pが1.2%高だったのに対し、日経平均は1.8%安となった。
高市氏の関連銘柄と目される助川電気工業の株価は、9月入り後に一時6割高と急騰したが、足元では22日につけた直近高値から2割下落しており、過度な期待の織り込みが後退してきている様子がうかがえる。
<薄れる候補の独自色>
ひとつには、高市氏と首位を競うと目されている小泉氏が有力視されてきていることがある。加藤勝信財務相など有力議員の後ろ盾を得ているほか、日本経済新聞などの世論調査で「次の総裁にふさわしい人」として、高市氏が無党派層で首位の一方、小泉氏は自民党支持層で首位に立つ。米賭けサイト「ポリマーケット」では、小泉氏の勝利を7割織り込んでおり、高市氏の2割を大きく引き離している。
昨年の総裁選時に比べ、高市氏の特色が薄れてきているとの見方もある。しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンド・マネージャーは「どの候補も安全運転。高市氏は保守色を抑え、財政にも大盤振る舞いでなく慎重な印象だ。小泉氏は改革色を抑えている様子がある」と話す。
自民党は昨年と異なり少数与党でもあり「野党寄りの政策が目立ち、候補間の独自色がなくなってきた」(しんきんAMの藤原氏)との見方だ。少数与党のため「目立った政策はとりにくく、大きくは変わらないとの受け止めになるのではないか」(大和の坪井氏)との見方もある。
もっとも、足元の株価が高値から調整気味となってきたことで、上昇余地が生じたとみることも可能だ。高市氏が勝利すれば「4万6000円を目指してもおかしくない」とりそなホールディングスの武居大暉ストラテジストは指摘する。
小泉氏が勝利した場合、いったんの株安を見込む声は多い一方、「株価が高い水準にあるときには調整リスクが意識されたが、先回りで調整が入っており、下押しはさほど強まらないのではないか」と大和証券の坪井氏は話す。
りそなHDの武居氏は、米国で利下げ期待の楽観的なムードがある中では下押しは限定的とみており、株価収益率(PER)でこの数年の中心レンジ14―16倍の上限寄りとなる15.5倍から算出する4万3500円辺りが一つの下値めどとの見方を示す。
(平田紀之 編集:橋本浩)