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マクロスコープ:「ポスト石破」は小泉氏優位か、海外勢も改革路線を評価=ピクテ・ジャパン 市川氏

2025年09月08日(月)10時30分

 9月8日、石破茂首相(自民党総裁)の辞任表明により、自民党内では政権維持に向け野党との連立拡大を視野に、すでに複数の後任候補者の名前が取り沙汰されている。写真は小泉進次郎農相。都内で5月撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)

Yusuke Ogawa

[東京 8日 ロイター] - 石破茂首相(自民党総裁)の辞任表明により、自民党内では政権維持に向け野党との連立拡大を視野に、すでに複数の後任候補者の名前が取り沙汰されている。専門家に総裁選の行方と金融市場の受け止めなどについて聞いた。

<ピクテ・ジャパン シニア・フェロー 市川眞一氏>

「ポスト石破」の行方については、小泉進次郎農相と高市早苗前経済安全保障相が最も有力ではないか。その中でも、小泉氏が優位に立ちつつあるようにみえる。2人は昨年の総裁選後に対照的な行動を取った。高市氏は石破首相への批判を繰り返し、党内では反主流の立場を鮮明にした。

方や、小泉氏は衆院選の敗北責任を取って選挙対策委員長を辞任し、その後は政治改革本部の事務局長として、「政治資金規正法の再改正」という難しい仕事を引き受けた。負けを素直に受け入れ、黙々と自分の仕事をしたことに対する評価が自民党内で高まっている。

当初、フルスペック式での総裁選になると高市氏が有利になるとの見方が強かったが、最近の世論調査では、自民支持層の中での小泉氏の支持が伸びている。総裁選の実施方式の違いはそれほど選挙結果に影響しないのではないか。

高市氏と比べると、小泉氏は必ずしも財政拡張路線に積極的ではない。一方で、雇用制度改革を重視しており、安倍政権でも成しえなかった解雇規制の見直しに着手できるかもしれないという期待感が市場関係者の間で生まれている。日本維新の会との関係も良好で、連立拡大のシナリオが見えやすいこともあり、(財政拡張派ではないからといって)株式市場はネガティブな反応はしないはずだ。

特に海外投資家は、日銀が国債の買い入れを減らす中で、日本の財政悪化を強く懸念している。ひと昔前は「とにかく財政を出動せよ」という投資家が多かったが、2022年に英国で国債価格が暴落した「トラスショック」が起きてからは、かなり状況が変わっている。労働市場をはじめとした構造改革を重視する風潮が強まっており、海外勢からの評価も(小泉氏は)悪くはないのではないか。

もっとも、誰が次の総理総裁になるにせよ、自民党が危機的な状況にあることは変わりない。07年の参院選で安倍政権が敗北し、その後の福田・麻生政権下でずるずると党勢が低下。最終的には総選挙で大敗して、政権交代をせざるを得なかった時とよく似ている。自民が挽回を図るには、次の政権が非常に重要だ。

石破氏は元々「政治とカネの問題」に厳しい姿勢を示し、世間の期待も高かったはずだが、いざ首相に就任すると大きな改革に踏み込めなかった。ただ、自民の歴史を振り返ると、かつて森内閣の時代に支持率がわずか1ケタ台にまで下がったが、後継の首相となった(進次郎氏の父である)小泉純一郎氏が党を見事に立て直した例もある。ポスト石破に選ばれた人物が、党内外で改革路線に舵を切れるかどうかに注目している。

(聞き手・小川悠介)

ロイター
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