アングル:超長期金利が上昇一服、財務省の発行減額巡り思惑 市場は好感

28日の円債市場では超長期金利の上昇が一服し、30年金利が大きく低下する場面があった。写真は円紙幣と日本国旗のイメージ。2022年6月撮影(2025年 ロイター/Florence Lo)
Tomo Uetake Mariko Sakaguchi
[東京 28日 ロイター] - 28日の円債市場では超長期金利の上昇が一服し、30年金利が大きく低下する場面があった。米金利低下や月末特有のインデックス投資家による買いに加え、財務省が超長期債の発行減額に動くのではないかとの思惑が浮上。市場では超長期金利が落ち着けば長期金利の上昇圧力が和らぐと前向きな見方が出ている。
<PD懇前のアンケート>
ある国内証券の債券セールス担当は、財務省が9月下旬に開催する国債市場特別参加者(プライマリー・ディーラー)会合(通称「PD懇」)を前に「きのう夕方、流動性供給入札の発行額に関するアンケートを送付したことが材料視されているようだ」と話す。
同アンケートには「残存期間15.5年超39年未満」対象の流動性供給入札の発行額を現在の3500億円から2500億円に減額、もしくはゼロにし、発行減額分は「残存1年超―5年以下」に振り替える、との提案が記載されていたという。
30年金利は今週、過去最高水準を連日更新していた。国内銀行の運用担当は「前回は消極的だった財務省が買入消却(バイバック)を検討しようとしている印象だ。じりじりと上昇が続いていた円金利を抑えようという狙いがあるのだろう」との見立てを語る。仮に同ゾーンの発行額がゼロになれば、オフ・ザ・ラン(既発債)銘柄を財務省が所有者から買い入れて消却するバイバックがやりやすくなると期待される。
<静かな金利上昇>
アクサ・インベストメント・マネージャーズの木村龍太郎債券ストラテジストは、今月の超長期金利上昇について、規制対応の買いが一巡した生命保険会社や外国人ら主要投資家の買いが引く中で国債の発行が淡々と続くという「需給」要因でじりじりと金利が上昇している構図だと指摘する。国債入札の不調を受けて金利が一気に上昇して過去最高水準をつけた今年5月とは異なり、「静かな金利上昇」の様相だという。
円債市場では先週から、既発の超長期債売りが目立っていた。その結果、オフ・ザ・ランの30年債では、「残存25年」の66回債を筆頭に、生保勢が「減損ライン」の目安として意識する50円近くまで値崩れしている銘柄が続出している。
ある大手生保の幹部は「(過去に購入した)低クーポン債の入れ替えを進めているところだが、現場が結構(売却に)苦労しているようだ」と明かす。さらに半期末を控えて、生保勢が債券の含み損を解消するため、益の乗った株式との「合わせ切り」の動きが出やすいとの見る向きも多い。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤原和也債券ストラテジストは「証券会社も既発債の在庫を多く抱えてリスクを取る余力がなく、身動きが取れない状態だろう」と指摘。財務省が超長期債の需給や地合いの悪化を放置しない姿勢を改めて示したことはポジティブと評価する。
<長期金利の上昇圧力緩和も>
超長期の流動性供給入札の発行減額は同ゾーンの短期的な支援材料だと三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストはみている。自民党の前倒し総裁選の実施可能性が低下したとの見方も、財政規律を巡る過度な懸念の後退につながり、金利低下に寄与したという。
ニッセイ基礎研究所の金融調査室長、福本勇樹氏は「財務省から超長期ゾーンの金利上昇に配慮する動きが出たならば、市場参加者は買いやすくなる」と述べ、30年金利が3.18%を明確に下回ってくれば、チャート的に金利上昇圧力にいったん歯止めがかかる」との見方を示す。
超長期ゾーンが落ち着いてくれば、17年ぶり高水準を更新した長期金利の上昇圧力も和らぐと福本氏はみている。
(植竹知子、坂口茉莉子 編集:平田紀之、石田仁志)