マクロスコープ:自民党の混乱、夏以降の経済に影響懸念も

石破茂首相(自民党総裁)の去就をめぐる混乱が続いている。写真は自民党本部。7月3日、東京で撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)
Tamiyuki Kihara
[東京 12日 ロイター] - 石破茂首相(自民党総裁)の去就をめぐる混乱が続いている。8日に開かれた自民党の両院議員総会では、党則に基づく臨時総裁選実施の要否を検討する方針が決まった。所属議員からは「実施不可避」の声が聞かれる一方で、日米関税交渉のさなかでもあり、専門家からは夏以降の経済への影響を懸念する指摘もある。
「もう総裁選実施の流れは決まった。大きく前進だ」。両院総会後、ある参院議員はロイターの取材にこう語った。かつて石破派で行動をともにした田村憲久元厚生労働相も10日のフジテレビの番組で「(石破首相には)参院選で敗れた責任はある。両院総会の意見は非常に大きい」と述べた。
党則では所属国会議員と都道府県連代表の総数の過半数から要求があれば、臨時総裁選を行うとされる。一方で、実施期限は明記されていない。手続きを進めるためには、欠員となっている選管委員を執行部が任命する必要もある。
党総裁選管理委員長の逢沢一郎衆院議員は、意向確認の開始時期について「(8月15日の)終戦記念日を心して迎える必要もある。18日の週以降になるだろう」と述べた。石破首相も続投の姿勢を崩しておらず、手続きがどの程度のペースで進むかは見通せない部分もある。
こうした先行きの不透明さは、夏以降の経済に影を落とす。丸紅経済研究所社長(丸紅執行役員)の今村卓氏は「(自民党は石破首相の)続投と退陣を求める声が拮抗する微妙な状態。一種の袋小路に入ってしまった」とみる。
日米関税交渉を考えれば、仮に新総裁が選ばれれば「トランプ米大統領との関係構築をいまからもう一回やりますかと言われると、継続中の交渉への影響もあり、国益に合致するのかという批判も想定しなければならない」とも指摘する。
また、今村氏は「40年債など超長期金利の上昇に表れるように、実は『天井』は近いのではないか。英国のトラスショックが日本でも起こるとまで言うつもりはないが、日本が財政再建団体のようになってしまうリスクはある」と強調する。
政治の早期安定と政策遂行が必要との認識を示したうえで、「一律での消費減税などをする余裕は日本にはない。一方で、本当に苦しんでいる人たちはいる。そこにしっかりスポットを当てた政策を組み立てていく必要がある」と指摘。「課税すべきものには課税していかないと、中長期の日本の財政はかなり危険な領域に達するかもしれない」と語った。
(鬼原民幸 編集:橋本浩)