ニュース速報
ワールド

マクロスコープ:自民党の混乱、夏以降の経済に影響懸念も

2025年08月12日(火)11時52分

 石破茂首相(自民党総裁)の去就をめぐる混乱が続いている。写真は自民党本部。7月3日、東京で撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)

Tamiyuki Kihara

[東京 12日 ロイター] - 石破茂首相(自民党総裁)の去就をめぐる混乱が続いている。8日に開かれた自民党の両院議員総会では、党則に基づく臨時総裁選実施の要否を検討する方針が決まった。所属議員からは「実施不可避」の声が聞かれる一方で、日米関税交渉のさなかでもあり、専門家からは夏以降の経済への影響を懸念する指摘もある。

「もう総裁選実施の流れは決まった。大きく前進だ」。両院総会後、ある参院議員はロイターの取材にこう語った。かつて石破派で行動をともにした田村憲久元厚生労働相も10日のフジテレビの番組で「(石破首相には)参院選で敗れた責任はある。両院総会の意見は非常に大きい」と述べた。

党則では所属国会議員と都道府県連代表の総数の過半数から要求があれば、臨時総裁選を行うとされる。一方で、実施期限は明記されていない。手続きを進めるためには、欠員となっている選管委員を執行部が任命する必要もある。

党総裁選管理委員長の逢沢一郎衆院議員は、意向確認の開始時期について「(8月15日の)終戦記念日を心して迎える必要もある。18日の週以降になるだろう」と述べた。石破首相も続投の姿勢を崩しておらず、手続きがどの程度のペースで進むかは見通せない部分もある。

こうした先行きの不透明さは、夏以降の経済に影を落とす。丸紅経済研究所社長(丸紅執行役員)の今村卓氏は「(自民党は石破首相の)続投と退陣を求める声が拮抗する微妙な状態。一種の袋小路に入ってしまった」とみる。

日米関税交渉を考えれば、仮に新総裁が選ばれれば「トランプ米大統領との関係構築をいまからもう一回やりますかと言われると、継続中の交渉への影響もあり、国益に合致するのかという批判も想定しなければならない」とも指摘する。

また、今村氏は「40年債など超長期金利の上昇に表れるように、実は『天井』は近いのではないか。英国のトラスショックが日本でも起こるとまで言うつもりはないが、日本が財政再建団体のようになってしまうリスクはある」と強調する。

政治の早期安定と政策遂行が必要との認識を示したうえで、「一律での消費減税などをする余裕は日本にはない。一方で、本当に苦しんでいる人たちはいる。そこにしっかりスポットを当てた政策を組み立てていく必要がある」と指摘。「課税すべきものには課税していかないと、中長期の日本の財政はかなり危険な領域に達するかもしれない」と語った。

(鬼原民幸 編集:橋本浩)

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは148円前半で底堅い、日経最高値で

ワールド

ブラジル・中国首脳が電話会談、BRICSや二国間関

ワールド

中国当局、エヌビディア H20半導体の使用回避を国

ワールド

豪中銀、全会一致で予想通り利下げ 一段の緩和には慎
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入する切実な理由
  • 2
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客を30分間も足止めした「予想外の犯人」にネット騒然
  • 3
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 4
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 5
    【徹底解説】エプスタイン事件とは何なのか?...トラ…
  • 6
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 7
    なぜ「あなたの筋トレ」は伸び悩んでいるのか?...筋…
  • 8
    「靴を脱いでください」と言われ続けて100億足...ア…
  • 9
    「古い火力発電所をデータセンターに転換」構想がWin…
  • 10
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 5
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 7
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 8
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 9
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 10
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中