G20財務相会議17日開幕へ、関税巡る不確実性と不協和音が影

20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が17─18日、南アフリカ・ダーバンで開催される。トランプ米政権の高関税措置を受けた世界的な不確実性、ベセント米財務長官(写真)の欠席、米国と新興国グループ「BRICS」の緊張など、懸念と不協和音が影を落としている。6月24日、米ワシントンで撮影(2025年 ロイター/Kevin Mohatt)
Colleen Goko Kopano Gumbi
[ヨハネスブルグ 15日 ロイター] - 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が17─18日、南アフリカ・ダーバンで開催される。トランプ米政権の高関税措置を受けた世界的な不確実性、ベセント米財務長官の欠席、米国と新興国グループ「BRICS」の緊張など、懸念と不協和音が影を落としている。
ベセント氏は2月の同会合も欠席した。米シンクタンクの大西洋協議会の国際経済担当責任者ジョシュ・リプスキー氏は「世界最大の経済大国の少なくとも政治的な上級レベルが出席していないのは問題だと思う」と語った。
トランプ氏は米国の輸入品全てに10%の基本関税を課し、追加関税として鉄鋼とアルミニウムに50%、自動車に25%、医薬品に最大200%をそれぞれ適用すると脅すなど、特定の国や製品をターゲットに懲罰的な関税を課す。貿易相手国25カ国に対する追加関税は8月1日に発効する予定だ。
さらに、南アフリカを含むBRICSに対してさらなる関税を課すとけん制している。
南アフリカ準備銀行(SARB、中央銀行)のフンディ・ツァジバナ副総裁はロイターに「政策の不確実性が現時点で最大のテーマとなっている」と言及した。
G20は、2000年代後半の金融危機からの脱却には世界各国が政策を調整する必要があるとの認識から本格的に発足した。
米外交問題評議会(CFR)のブラッド・セッツァー氏は「G20は、世界の全ての主要経済国が安定し、比較的開かれた世界経済に共通の関心を持つという前提に基づいて設けられた」とした上で、「しかし、トランプ氏は安定性に関心がなく、より閉鎖的な世界経済を望んでいる」と問題点を指摘した。
<財政難、債務問題>
今回の会合は、特にアフリカへの経済的圧力が高まっている中で開催される。米金融大手ゴールドマン・サックスによると、サハラ砂漠以南にあるアフリカ諸国の対外債務は国内総生産(GDP)の45%に相当する8000億ドルに膨れ上がり、従来の資金源は枯渇しつつある。
巨大経済圏構想「一帯一路」に基づき、数年間にわたって拡大していた中国からの融資は鈍化。その結果、800億ドルの資金ギャップが生じている。
G20のアフリカ専門家パネルを率いる元南アフリカ財務相のトレバー・マニュエル氏は「融資を受ける前に交渉すれば、彼らはそれに応じるだろう」としながらも、「ひとたび融資が実行されれば、彼らは見返りを期待し、それが法律に組み込まれることになる。そのため多くの注意を払う必要がある問題の1つとなっている」と指摘した。
その上で「今後は透明性をより高めることが重要であり、そのためには交換条件の取り決めなどはこれまでと全く異なる方法で対処する必要があると思う」と言及した。
一方、アフリカの対外資金調達のうち25%を占める米国および欧州からの資金は、米国が対外援助を凍結し、欧州諸国が資金を国防へ振り向ける中で削減の危機に直面している。
ウィットウォーターズランド大のルムキレ・モンディ氏(政治学)は「アフリカは困難な状況にある」とし、「(アフリカ)大陸への投資は、高水準の債務と低いGDP成長率のためにやせ細り、現在のマクロ経済であまり意味を持たなくなっている」との見解を示した。
アフリカ大陸で最も経済発展を遂げた南アフリカは、大国間の対立を乗り越えながらアフリカの利益を守らなければならないというプレッシャーに直面している。しかし、南アフリカ財務省はG20財務相・中銀総裁会議での具体的な目標について「コメントするのは時期尚早だ」とした。
G20の金融当局でつくる金融安定理事会(FSB)は14日、気候変動関連のリスクへの取り組み方に関する新たな計画を発表した。だが、気候変動関連リスクに対してトランプ米政権が後ろ向きな中で、政策への取り組みを一時中断した。
米国は、洪水や山火事、気候関連の大きな政策転換が金融の安定性にどのような影響を与えるかを検証する複数の部会から脱退している。