フロイドさん事件から5年、米政権が警察の黒人への対応調査を終了

米司法省は21日、警官の黒人に対する過剰な実力行使で公民権を侵害したとされる6つの地方警察に対する調査を終了するとともに、黒人に対する日常的な公民権侵害があったと認定した中西部ミネソタ州ミネアポリスと南部ケンタッキー州ルイビルの警察に関する予備調査を撤回すると発表した。写真は2022年3月、ケンタッキー州ルイビルで撮影(2025年 ロイター/Jon Cherry)
[ワシントン 21日 ロイター] - 米司法省は21日、警官の黒人に対する過剰な実力行使で公民権を侵害したとされる6つの地方警察に対する調査を終了するとともに、黒人に対する日常的な公民権侵害があったと認定した中西部ミネソタ州ミネアポリスと南部ケンタッキー州ルイビルの警察に関する予備調査を撤回すると発表した。調査を終了する対象となる6警察は西部アリゾナ州フェニックス、南部テネシー州メンフィス、オクラホマ州オクラホマシティー、ルイジアナ州、東部ニュージャージー州トレントン、ニューヨーク州マウントバーノン。
ミネアポリスで黒人男性のジョージ・フロイドさんが白人警官に首を圧迫され、死亡した事件から今月25日で5年を迎える。ルイビルでは20年3月に黒人女性ブリオナ・テイラーさんが白人警官に射殺されており、これらの事件の再発防止に向けてバイデン前大統領が人種差別を是正するために警察への監督を強化してきたが、反DEI(多様性、公平性、包摂性)の大統領令を出したトランプ大統領が覆した格好だ。
ディロン司法次官補は記者団に「連邦政府による地方警察への細かい管理は、まれな例外であるべきだ」として警察の管理権は地域社会に属すると主張。ミネアポリス、ルイビル両市に対する係争中の訴訟を取り下げることを明らかにした。
フロイドさんとテイラーさんの両遺族の代理人を務める公民権専門弁護士ベン・クランプ氏は「司法省は改革を後退させるだけでなく、真実を消し去ろうとしており、正義が立脚する大原則そのものに反している」と反発する声明を出した。
ミネアポリスとルイビルの両市長は司法省の動きとは関係なく、バイデン前政権下の司法省との合意で定められた改革を続けると表明。ミネアポリス市のジェイコブ・フレイ市長(民主党)は記者会見で「トランプ氏であれ、連邦政府の誰一人であれ、私たちが取り組んでいる任務を止めることはできない」と訴えた。
ルイビル市のクレイグ・グリーンバーグ市長は、75万ドルの予算を投じて独立した監視機関を採用し、警察改革の進捗状況を評価すると説明。グリーンバーグ氏は「改革の目標も改善の目的も、これまでと全く同じ」とし、「ただ、プロセスが違うだけだ」と語った。
司法省公民権局は国内の社会的弱者や、歴史的に権利を剥奪された人々の保護を目指して事件などの調査に取り組んできた。トランプ政権はそうした役割を放棄させる一方で、銃所持の権利や、米国の大学での反ユダヤ主義といった保守主義的な大義を追求するように強要している。
ディロン氏は、トランプ氏が今年1月に大統領に復帰して以来、公民権局に所属していた200人を超える弁護士が去ったことを明らかにした。