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米下院共和党、気候変動対策費を大幅削減へ トランプ氏意向反映

2025年05月13日(火)12時24分

5月12日、米下院の共和党議員らはトランプ大統領の政策に沿った予算成立を目指す中で、クリーンエネルギー関連の税制優遇措置の段階的廃止、電気自動車(EV)や再生可能エネルギー向け支出の削減、その他の気候変動対策関連資金の縮小を含む法案を公表した。写真は米議会議事堂。7日撮影(2025年 ロイター/Nathan Howard)

[ワシントン 12日 ロイター] - 米下院の共和党議員らは12日、トランプ大統領の政策に沿った予算成立を目指す中で、クリーンエネルギー関連の税制優遇措置の段階的廃止、電気自動車(EV)や再生可能エネルギー向け支出の削減、その他の気候変動対策関連資金の縮小を含む法案を公表した。

下院エネルギー・商業委員会は、バイデン前政権の目玉政策であるインフレ抑制法(IRA)の気候変動対策関連条項を廃止することで65億ドルの財源を確保する法案を提示した。この法案は13日に採決される予定。

一方、下院歳入委員会はIRAに含まれる複数の税制優遇措置の撤回または段階的な廃止を提案した。具体的にはEV購入者向けの税額控除や住宅のエネルギー効率改善に対する税額控除の終了、さらに主要なクリーンエネルギー関連補助金の多くを2031年までに段階的に廃止することなどが盛り込まれている。

風力や太陽光発電のほか、共和党議員が支持する原子力や地熱エネルギーなども対象とする幅広いクリーンエネルギーに対する税額控除について、29年から段階的廃止する。開発業者が税額控除の権利を売却してプロジェクトの建設資金に充てることを認めた制度も廃止する。

その一方で、石油・ガス業界が推進する二酸化炭素(CO2)回収・貯留(CCS)と大気からのCO2直接回収(DAC)に対する税制優遇については、プロジェクトへの外資参入に一部制限が設けられたものの、ほぼ現状通り維持される。また、持続可能な航空燃料(SAF)に対する税額控除も、市場拡大を狙うバイオ燃料生産者へ配慮して延長される。

太陽光発電や風力発電業界の団体は、これらの措置は米国内の雇用喪失につながり、国内エネルギー源の拡大を目指すトランプ政権の目標とも矛盾すると批判している。他のクリーンエネルギー推進派からは予想されたほど厳しいものではないものの、業界にとっては大きな打撃になるとの指摘が出ている。

<気候変動対策への支出削減>

エネルギー・商業委員会の法案には、バイデン前政権下の環境保護庁(EPA)が導入した主要な規制の廃止も盛り込まれており、27年型の乗用車および小型・中型トラックから排出基準を厳格化する規則も廃止対象となる。

また同法案は液化天然ガス(LNG)の輸出許可手続きを迅速化するほか、エネルギー省に対し、戦略石油備蓄(SPR)の補充に15億ドル以上を充てるよう求めている。

下院エネルギー・商業委員会のガスリー委員長は、11日にウォール・ストリート・ジャーナル紙に掲載された論説記事で、この法案は環境保護を名目とした無駄な支出に充てられるはずだった資金を回収するものだと主張した。

この法案はまた、共和党議員らが不正支出の疑いがあると批判してきたEPA所管の270億ドル規模の温室効果ガス削減基金から未使用分を撤回する内容となっている。

IRAによって創設された再生可能エネルギーおよび電化関連の9つの補助金プログラムからの未使用資金も撤回する。エネルギー省の融資プログラムに残る未使用のIRA関連資金も対象となる。

石油・ガス施設からのメタン排出削減資金や、温室効果ガス報告関連資金、港湾・製造施設・学校などにおける大気汚染削減資金、さらには低所得者層向けクリーンエネルギー利用促進資金など、IRAによって手当てされた資金の未使用分を撤回する。

ロイター
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