ニュース速報
ワールド

米中、追加関税引き下げで合意 景気後退懸念緩和で株・ドル急騰 

2025年05月13日(火)00時25分

 5月12日、米国と中国は両国の貿易問題を巡り10─11日にスイスのジュネーブで行った閣僚級協議の合意内容を発表した。写真は両国の国旗。4月、北京市内で撮影(2025年 ロイター/Tingshu Wang)

Emma Farge Olivia Le Poidevin Lewis Jackson

[ジュネーブ 12日 ロイター] - 米国と中国は12日、両国の貿易問題を巡り10─11日にスイスのジュネーブで行った閣僚級協議で、相互に発動した関税率を115%ポイント引き下げることで合意したと発表した。上乗せ分の90日間の停止、経済・貿易関係に関する協議メカニズムの構築も打ち出した。

米中は関税の応酬の結果、米国の対中関税率は145%、中国の対米関税率は125%まで上げられた。

この合意を受け、株式市場とドル相場は急騰した。

ベセント米財務長官は会見で、「週末の協議では、デカップリング(分断)は望まないというのがコンセンサスだった。高関税がもたらしたのは禁輸措置に等しく、どちらも望まない状況だった。われわれが望むのは貿易だ」と述べた。

中国の何立峰副首相は11日、記者団に対し、両国の懸案事項について「率直かつ詳細で、建設的」な協議を行ったとし、「大きな進展を遂げ、重要なコンセンサスに達した」と語った。

また、ベセント財務長官は12日、CNBCのインタビューに応じ「今後数週間以内に、より充実した合意に向けて再協議を実施することになると思う」と説明。ただ、次回の協議の場所や日程については未定だと述べた。

今回の合意について、米国の特定の業種を対象とする関税は対象外で、米国は引き続き医薬品、半導体、鉄鋼といったサプライチェーン(供給網)が脆弱と判定した分野で戦略的なリバランスを図っていくとした。

米中の貿易収支不均衡の是正に向け購入協定を締結する可能性があると述べた。協議で為替については話し合わなかったとした。

交渉に詳しい情報筋によると、同合意には、中国と香港からの小口輸入品に対する関税免除措置(デミニミス・ルール)の免除は含まれていない。トランプ政権は今月2日、同措置を廃止する大統領令に署名した。

<関税率に差>

合意によると、米中は関税率を10%に引き下げる。米国は、トランプ大統領が「解放の日」と称して4月2日に発表した中国に対する相互関税の上乗せ分24%を90日間停止する。中国も24%の上乗せ分を90日間停止する。

ただし、4月2日より前に米が発動した関税は維持される。今年2月と3月に発動した合成麻薬「フェンタニル」流入問題を巡る関税計20%は維持されるため、中国に対する関税率は30%となる。電気自動車(EV)、鉄鋼・アルミニウムを対象とした関税も維持される。

<中国の非関税措置>

中国は4月2日以降導入した米国に対する非関税措置を停止・除外する。ただ具体論には踏み込んでいない。中国は4月にレアアース(希土類)の輸出管理強化、デュポンの中国事業に対する反ダンピング(不当廉売)調査、一部米防衛、テック企業のブラックリスト掲載といった措置を講じており、これらが廃止されることが予想される。ただ、2月に発表されたグーグルへの反ダンピング調査、3月の10数社のブラックリスト掲載は継続されることになる。またレアアースの輸出管理強化は全ての国を対象とした措置のため、米国に対する非関税措置と見なさない可能性がある。

<ドルは上昇、慎重な見方も>

発表を受け、ドルや米株指数先物が急騰。欧州市場では海運マースク、高級ブランドLVMHが買われた。

上海保銀投資管理(ピンポイント・アセット・マネジメント)のチーフエコノミスト、張智威氏は「関税の引き下げは50%程度とみていたので予想を超える結果だった。両国経済、世界経済にとても朗報で、目先の世界供給網への打撃に対する投資家の懸念がかなり緩和する」と述べた。

ラボバンク(ロンドン)のFX戦略責任者ジェーン・フォーリー氏は、協議終了後に米側からポジティブな発言が出て市場はすでに反応していたので、きょうの発表はお墨付きという形でドルが一段と上昇していると指摘した。ただ「だからといって、トランプ大統領就任前の状況に戻ったわけではない。米国は引き続き、あらゆる国に対し相互関税の基本税率10%を課し、上乗せ分の90日間の猶予期間は刻々と過ぎている。関税政策がどうなるのか、世界経済や中央銀行の政策にどのような影響を与えるのか、依然かなりの不確実性がある」と述べた。

ノルデア(ヘルシンキ)のチーフマーケットアナリスト、ヤン・フォン・ゲリチ氏は「市場は額面通りに受け止めているが、私はやや懐疑的だ。関税を下げたいのなら、なぜこのようなやり方をするのか。なお状況は流動的で不確実性は高まっている」と述べた。トランプ大統領が4月に相互関税を華々しく発表しておいて、わずか1週間で上乗せ部分の一時停止を発表したことを踏まえ、「ひとまず合意が発表されたが、まだ何かあるのではないか、細部で双方が折り合えないことがあり、何か別の展開が待っているのではないかという懸念が拭えない。今聞いている全てを額面通りに受け取るべきでない」と警告した。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ関税の大半違法、米控訴裁が判断 「完全な災

ビジネス

アングル:中国、高齢者市場に活路 「シルバー経済」

ビジネス

米国株式市場=反落、デルやエヌビディアなどAI関連

ワールド

米、パレスチナ当局者へのビザ発給拒否 国連総会出席
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界がうらやむ国」ノルウェーがハマった落とし穴
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 7
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 10
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 7
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 8
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 9
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 10
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中