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米中、関税率を115%引き下げ・一部90日停止 スイス閣僚級協議で合意

2025年05月12日(月)19時52分

 5月12日、米国と中国は両国の貿易問題を巡り10─11日にスイスのジュネーブで行った閣僚級協議の合意内容を発表した。写真は両国の国旗。4月、北京市内で撮影(2025年 ロイター/Tingshu Wang)

By Emma Farge, Olivia Le Poidevin, Lewis Jackson

[ジュネーブ 12日 ロイター] - 米国と中国は12日、両国の貿易問題を巡り10─11日にスイスのジュネーブで行った閣僚級協議で、相互に発動した関税率を115%ポイント引き下げることで合意したと発表した。上乗せ分の90日間の停止、経済・貿易関係に関する協議メカニズムの構築も打ち出した。

米中は関税の応酬の結果、米国の対中関税率は145%、中国の対米関税率は125%まで上げられた。

ベセント米財務長官は会見で、「週末の協議では、デカップリング(分断)は望まないというのがコンセンサスだった。高関税がもたらしたのは禁輸措置に等しく、どちらも望まない状況だった。われわれが望むのは貿易だ」と述べた。

今回の合意について、米国の特定の業種を対象とする関税は対象外で、米国は引き続き医薬品、半導体、鉄鋼といったサプライチェーン(供給網)が脆弱と判定した分野で戦略的なリバランスを図っていくとした。

米中の貿易収支不均衡の是正に向け購入協定を締結する可能性があると述べた。協議で為替については話し合わなかったとした。

<関税率に差>

合意によると、米中は関税率を10%に引き下げる。米国は、トランプ大統領が「解放の日」と称して4月2日に発表した中国に対する相互関税の上乗せ分24%を90日間停止する。中国も24%の上乗せ分を90日間停止する。

ただし、4月2日より前に米が発動した関税は維持される。今年2月と3月に発動した合成麻薬「フェンタニル」流入問題を巡る関税計20%は維持されるため、中国に対する関税率は30%となる。電気自動車(EV)、鉄鋼・アルミニウムを対象とした関税も維持される。

<中国の非関税措置>

中国は4月2日以降導入した米国に対する非関税措置を停止・除外する。ただ具体論には踏み込んでいない。中国は4月にレアアース(希土類)の輸出管理強化、デュポンの中国事業に対する反ダンピング(不当廉売)調査、一部米防衛、テック企業のブラックリスト掲載といった措置を講じており、これらが廃止されることが予想される。ただ、2月に発表されたグーグルへの反ダンピング調査、3月の10数社のブラックリスト掲載は継続されることになる。またレアアースの輸出管理強化は全ての国を対象とした措置のため、米国に対する非関税措置と見なさない可能性がある。

<ドルは上昇、慎重な見方も>

発表を受け、ドルや米株指数先物が上昇。欧州市場では海運マースク、高級ブランドLVMHが買われた。

上海保銀投資管理(ピンポイント・アセット・マネジメント)のチーフエコノミスト、張智威氏は「関税の引き下げは50%程度とみていたので予想を超える結果だった。両国経済、世界経済にとても朗報で、目先の世界供給網への打撃に対する投資家の懸念がかなり緩和する」と述べた。

ラボバンク(ロンドン)のFX戦略責任者ジェーン・フォーリー氏は、協議終了後に米側からポジティブな発言が出て市場はすでに反応していたので、きょうの発表はお墨付きという形でドルが一段と上昇していると指摘した。ただ「だからといって、トランプ大統領就任前の状況に戻ったわけではない。米国は引き続き、あらゆる国に対し相互関税の基本税率10%を課し、上乗せ分の90日間の猶予期間は刻々と過ぎている。関税政策がどうなるのか、世界経済や中央銀行の政策にどのような影響を与えるのか、依然かなりの不確実性がある」と述べた。

ノルデア(ヘルシンキ)のチーフマーケットアナリスト、ヤン・フォン・ゲリチ氏は「市場は額面通りに受け止めているが、私はやや懐疑的だ。関税を下げたいのなら、なぜこのようなやり方をするのか。なお状況は流動的で不確実性は高まっている」と述べた。トランプ大統領が4月に相互関税を華々しく発表しておいて、わずか1週間で上乗せ部分の一時停止を発表したことを踏まえ、「ひとまず合意が発表されたが、まだ何かあるのではないか、細部で双方が折り合えないことがあり、何か別の展開が待っているのではないかという懸念が拭えない。今聞いている全てを額面通りに受け取るべきでない」と警告した。

ロイター
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