ニュース速報
ワールド

シリアのアサド政権崩壊、反体制派がダマスカス掌握 大統領は首都離脱

2024年12月08日(日)18時32分

 シリアの反政府勢力は8日、部隊が首都ダマスカスに入ったと発表した。一方、政府軍の幹部2人はロイターに対し、アサド大統領が同日にダマスカスから飛行機で出発したと語った。目的地は不明という。ダマスカスで5日撮影(2024年 ロイター/Firas Makdesi)

Suleiman Al-Khalidi Timour Azhari

[アンマン/ベイルート/カイロ 8日 ロイター] - シリアの反政府勢力は8日、首都ダマスカスを掌握し、アサド大統領を追放したと国営テレビで表明した。アサド大統領は航空機で首都を離れたという。これにより、父の政権から50年余り続いたアサド一族による体制が崩壊した。

シリア当局者はロイターに、陸軍司令部がアサド政権の終焉を将兵らに通達したと語った。ただ、軍はハマやホムスなど主要都市などで「テロリスト集団」に対する作戦を継続していると発表した。

陸軍高官2人によると、アサド大統領は8日早朝にダマスカスを離れたが、目的地は分かっていないという。反体制派が首都に進攻した際、政府軍は展開していなかったという。

反政府勢力は「われわれは捕らわれた仲間を解放し、セドナヤ刑務所における不正の時代の終焉を告げるニュースをシリア国民と共に祝う」と表明。同刑務所はダマスカス郊外にある大規模な軍事刑務所で、シリア政府は数千人を拘束していた。

目撃者によると、ダマスカスの主要広場には数千人が集まり、手を振りながら「自由」と叫んでいたという。

飛行中の航空機を追跡するフライトレーダーによると、反政府勢力がダマスカスを制圧したと伝えられたころ、シリア航空機がダマスカス空港を離陸。同機は当初、アサド政権のアラウィ派が拠点とするシリア沿岸部に向かっていたが、突然Uターンし、数分間反対方向に飛行した後、レーダーから消えたという。

ロイターは搭乗者を確認できていないが、シリアの情報筋2人は、飛行機が事故に遭った可能性が非常に高いとし、撃墜された可能性もあると述べた。

<不安定化の新たな波>

反政府勢力は8日早朝、わずか1日の戦闘で中部の主要都市ホムスを完全に支配したと発表していた。事態が急展開したことににアラブの周辺各国は驚き、地域不安定化の新たな波に懸念が高まっている。

アサド政権崩壊はシリアにとって大きな転換点となる。同国では過去13年余りの間、政府軍と反体制派による戦闘で都市が瓦礫と化し、数十万人が死亡した。また、数百万人が難民として国外に逃れた。

今後の鍵になるのは、反政府勢力に制圧されたシリア西部地域の安定化だ。西側諸国はアサド政権と長年距離を置いてきたが、国際的にテロ組織に指定されているシャーム解放機構(HTS)が影響力を持つとみられる新政権にどう対応するか判断しなければならない。

西部全域で反政府勢力の攻勢を率いてきたHTSは、かつてはアルカイダ系の「ヌスラ戦線」として知られていたが、最高指導者アブ・ムハンマド・アルゴラニ氏は2016年に過激派による聖戦主義運動との関係を断った。

シリア専門家でオクラホマ大学中東研究センター所長のジョシュア・ランディス氏は「重要な問題は、政権移行がどれだけ秩序あるものになるかだ。そして、ゴラン氏が秩序ある移行を強く望んでいるのは明らかだ」と述べた。

ゴラニ氏は、米軍が03年にフセイン政権を打倒した後にイラクを襲った混乱が再発することを望んでおらず、「彼らには再建が必要で、欧州と米国が制裁を解除する必要がある」とランディス氏は語った。

ただ一部のシリア人は、HTSが厳格なイスラム主義による統治を行い、報復を進めるのではないかと懸念している。

米国の同盟国であるアラブ首長国連邦(UAE)やエジプトなどはイスラム過激派を脅威と見なしていることから、HTSが周辺主要国から抵抗に直面する可能性もある。

UAEの大統領外交顧問であるアンワル・ガルガシュ氏は、自国にとっての主な懸念は「過激主義とテロリズム」だと述べた。

米国防総省のダニエル・シャピロ副次官補(中東担当)は、バーレーンで8日開かれた安全保障会議「マナマ対話」で、米国はシリア東部にある駐留基地を維持し、過激派組織「イスラム国」の復活を阻止するために必要な措置を講じると述べた。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英中銀ピル氏、QEの国債保有「非常に低い水準」まで

ワールド

クラウドフレアで障害、数千人に影響 チャットGPT

ワールド

イスラエル首相、ガザからのハマス排除を呼びかけ 国

ビジネス

ユーロ圏銀行、資金調達の市場依存が危機時にリスク=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 10
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中