情報BOX:今年のノーベル平和賞、UNRWA・ICJ・国連事務総長が有力
今月11日に発表される2024年のノーベル平和賞の受賞者に、専門家からは国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)、国際司法裁判所(ICJ)、グテレス国連事務総長が有力候補になるとの見方が出ている。ノルウェーのオスロで2022年撮影(2024年 ロイター/Victoria Klesty)
Gwladys Fouche Ilze Filks
[オスロ/ストックホルム 3日 ロイター] - 今月11日に発表される2024年のノーベル平和賞の受賞者に、専門家からは国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)、国際司法裁判所(ICJ)、グテレス国連事務総長が有力候補になるとの見方が出ている。
過去を踏まえると、ノルウェーのノーベル賞委員会は驚かれる受賞者を発表する可能性がある。一方、該当者がいないと公表する可能性もある。
ブックメーカー(懸け屋)は、ロシアの反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏を有力候補に挙げた。しかし、収監されていた北部ヤマロ・ネネツ自治管区の刑務所で今年2月に死亡しており、死後には受賞できないため不可能だ。
他の有力候補として挙げたのは、ロシアに侵攻されたウクライナのゼレンスキー大統領だ。だが、戦闘中の国の指導者であるため受賞する可能性は低い。
他方でイスラエルとイスラム組織ハマスのパレスチナ自治区ガザでの戦闘が拡大し、ウクライナでの戦闘が3年目を迎え、内戦が続いているスーダンで1000万人を超える避難者が出ている中で、ノーベル賞委員会は困窮している市民を救済する人権活動家に授与したいと考えている可能性がある。
オスロ平和研究所のヘンリック・ウルダル所長はロイターに対して「UNRWAも候補の一つになり得る。ガザでの戦闘の苦しみを体験している民間のパレスチナ人のために非常に重要な活動をしている」との見方を示した。
ただ、UNRWAの一部職員が戦闘の引き金となったハマスによる23年10月7日のイスラエル南部への攻撃に参加した疑惑を踏まえると、UNRWAに授与すれば物議を醸すだろうとも付け加えた。
ノーベル賞委員会が、第2次世界大戦後に構築された国際世界秩序とその頂点に立つ機関の国連を強化する必要性に焦点を当てたいと考えている可能性もある。ノーベル平和賞について調べてきた歴史家のアスレ・スベーン氏は、そのことは国連事務総長のグテレス氏またはICJに授与する可能性を意味し得ると指摘した。
スベーン氏は「グテレス氏は国連の象徴だ」とし、「ICJの最も重要な任務は、国際人道法が世界で適用されるようにすることだ」と語った。
一方、直近では1972年がそうだったように、これまでに計19回あった「該当者なし」の判断を下す可能性もある。
ストックホルム国際平和研究所のダン・スミス所長はロイターに対して「ノーベル賞委員会が授賞を留保することで、地球で戦闘が繰り広げられている事実に注意を向けさせるべき年なのかもしれない」と言及した。
今年のノーベル平和賞には286人がノミネートされており、これまでに国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、ローマ教皇フランシスコ、英動物学者デービッド・アッテンボロー卿の名前が明らかになっている。