アングル:中国、アフリカ債務免除に踏み込まず 新たな資金拠出約束
9月7日、中国は4―6日に開いた「中国アフリカ協力フォーラム(FOCAC)」で、アフリカ諸国の多くが求めていた債務免除には踏み込まなかったものの、今後3年間にアフリカ支援に3600億元(7兆220億円)を拠出すると表明した。写真は人民大会堂で開かれたFOCAC首脳会議で撮影(2024年 ロイター/Florence Lo)
Duncan Miriri Laurie Chen
[ナイロビ/北京 7日 ロイター] - 中国は4―6日に開いた「中国アフリカ協力フォーラム(FOCAC)」で、アフリカ諸国の多くが求めていた債務免除には踏み込まなかったものの、今後3年間にアフリカ支援に3600億元(7兆220億円)を拠出すると表明した。
2000年に発足したFOCACは、習近平国家主席が2013年に広域経済圏構想「一帯一路」を打ち出すと重要性が高まった。中国はFOCACをてこに、対アフリカ政策で欧米や日本に対抗しようとしており、今回はアフリカから50を超える国の指導者が参加した。
英調査会社テリマーのハスナイン・マリク氏は「中国は新興市場への資金動員を再び積極化しようとしている」と述べた。ただ、新型コロナウイルスのパンデミック前の水準には戻っていないという。
今回の拠出額は2021年の前回拠出額を上回っているが、ピークだった15年と18年の600億ドル(8兆5300億円)を下回った。15年と18年の資金は道路、鉄道、橋梁などの建設に充てられたが、19年以降は拠出額が減り、アフリカでは建設プロジェクトが停滞している。
中国は今回の拠出について、貿易関係を改善するためのインフラプロジェクト30件に充当すると説明したが、詳細は明かさなかった。
アフリカ大陸は54カ国を擁し、総人口は10億人を超える。アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の実現には輸送網の整備が欠かせないが、インフラ資金が推計で年1000億ドル不足している。
中国政府は近年、こうしたプロジェクトへの資金拠出を減らし、「小規模で美しい」プロジェクトに重点を移している。国内経済の低迷やアフリカ諸国の債務リスク増大が主な理由だ。
中国外務省の毛寧副報道局長は6日の定例記者会見で、新たな拠出合意と中国の足元の慎重な海外融資戦略との整合性について問われると、「プロジェクトの具体的な実施を含め、中国とアフリカ諸国の協力については双方が協議し、決定する」と述べるにとどめた。
<通貨スワップ>
中国は今回、アフリカで30のクリーンエネルギープロジェクトを始動し、原子力技術分野で協力し、工業化を遅らせている電力不足に取り組む方針も示した。
南アのスタンダード銀行の調査部門責任者、グーラム・バリム氏は「FOCAC首脳会議の結果から、グリーンプロジェクト、とりわけ再生可能エネルギー設備に弾みが付きそうだ」と述べた。バリム氏によると、中国は風力発電と太陽光発電の分野で世界的にトップに立ち、重要なサプライチェーン(供給網)を握り、生産コストを抑えている。
しかし懐疑的な見方もある。
BNPパリバの新興市場クレジット戦略グローバル責任者、トラン・グエン氏は「問題は投資の規模そのものではなく、債務条件の透明性の欠如にある」と言う。
返済に苦しむ国に対して中国から債務負担免除の申し出はなく、多額の対中債務を抱える国にとって明確な成果があったとは言い難い。
中国はアフリカ諸国の債務免除を見送る一方で、他の債権者に「共同の行動と公平な負担分担の原則の下、アフリカ諸国の債務の処理と再編に参加するよう」促した。
大きな案件がまとまることを期待していたアフリカ諸国は、控えめな成果しか得られなかった。
エチオピアとモーリシャスは、中国人民銀行(中央銀行)との新たな通貨スワップ枠を発表。ケニアは近代的な鉄道などの主要プロジェクト向けの融資再開に向けた交渉が進展したと明らかにした。
それでも、一部の人々はなお楽観的で、アフリカの安全保障、人道的課題、その他の非資金的な問題に対する中国の関与拡大を歓迎している。タンザニアのサミア大統領はX(旧ツイッター)に「約70年にわたる努力により、中国とアフリカの関係は歴史上最良の状態にある」と投稿した。