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焦点:米大統領選討論会、踏み込んだ政策論争不在 市場は反応薄

2024年09月11日(水)17時01分

 9月11日、11月の米大統領選に向け、民主党候補ハリス副大統領と共和党候補トランプ前大統領が10日夜、初のテレビ討論会に臨み、経済、内政、外交など幅広い問題を巡り論戦を繰り広げた。写真は討論会に臨む両候補が映ったテレビ画面。10日、ニューヨークで撮影(2024年 ロイター/Adam Gray)

Saqib Iqbal Ahmed Suzanne McGee

[ニューヨーク 11日 ロイター] - 11月の米大統領選に向け、民主党候補ハリス副大統領と共和党候補トランプ前大統領が10日夜、初のテレビ討論会に臨み、経済、内政、外交など幅広い問題を巡り論戦を繰り広げた。

オンライン賭けサイトではハリス氏の勝率が上昇したものの、米市場関係者は、関税・税制・規制など市場を揺るがしかねない重要な政策課題で新たな情報に乏しかったとし、慎重姿勢を崩していない。

ただ、一部の市場関係者はハリス氏が予想より優勢だったと指摘。同氏が勝利する可能性が高まったと投資家が判断すれば、今後数日で一部の資産価格が変動する可能性も残されていると述べた。

サウンド・インカム・ストラテジーズのポートフォリオマネジャー、エリック・ベイリッチ氏は「両候補とも経済的に強い主張はなかったが、全体的にはハリス氏の方がトランプ氏より良かった」とした上で「市場は強硬な発言を求めているのではなく、明確さを求めている」と述べた。

オンライン賭けサイト「プレディクトイット」では討論会を受けてハリス氏の勝率が53%から56%に上昇。トランプ氏の勝率は52%から48%に低下した。

資産価格の反応は限定的だった。株価指数先物は討論会が進むにつれ軟化。S&P500Eミニはアジア時間午前の取引で0.5%安、ナスダック100Eミニは0.6%安となった。

ドル指数は0.2%下落。

カーソン・グループのグローバル・マクロ・ストラテジスト、ソヌ・バルゲーズ氏は「有権者は依然二分されており、今回の討論会を受けて多くの有権者が考えを変えるとは思えない」と指摘。「唯一の手がかりは賭けサイトでハリス氏が前進したことだが、大接戦であることに変わりはない」と述べた。

ただ一部の投資家は、大統領選の勝敗が一握りの激戦州の有権者に左右される可能性があるため、候補者の印象がわずかでも変われば結果に重大な影響を及ぼし得ると指摘。ニューヨーク・タイムズ紙がまとめた世論調査の平均値によると、両候補は激戦州7州で事実上、互角の戦いを繰り広げている。

コンベラのアジア太平洋地域主任為替・マクロストラテジスト、シャイア・リー・リム氏は「今のところ市場に大きな影響はないようだ。これは討論会に向けて比較的低いボラティリティーが見込まれていたことと一致している」とした上で「そうは言っても、今回の討論会は選挙を巡る確率を変える大きなきっかけとなる可能性がある」と述べた。

大統領選は市場の重大な関心事だが、最近の市場では政治不安と、米景気減速に対する懸念、連邦準備理事会(FRB)の利下げ幅を巡る不透明感といった短期的な材料が混然一体となっている。S&P総合500種指数は先週、弱い雇用統計を受けて週間ベースで昨年3月以来の下落率を記録した。

<税制と関税>

トランプ氏は法人税減税のほか、貿易・関税に厳しい姿勢で臨むことを公約に掲げている。ドル高が米経済に悪影響を及ぼしているとも主張しているが、一部のアナリストは同氏の政策でインフレが進行し、ドル高につながる可能性があると指摘する。

ハリス氏は先月、法人税率を21%から28%に引き上げると表明したが、市場では企業業績に悪影響が出かねないとの見方も浮上している。

討論会では、ハリス氏が輸入品に高関税を課すトランプ氏の政策を中間層への課税に例えて批判。一般世帯や小規模事業者に優遇税制を適用する自身の政策をアピールした。

一方のトランプ氏は自身の関税案を擁護し、国内物価の上昇にはつながらないと主張した。

ただ、経済政策の行方は今後しばらく明確にはならないかもしれない。カーソン・グループのバルゲーズ氏は「政策について実質的な議論はあまりなかった。どちらの候補も、現在とは大きく異なる経済政策を主張しなかった。結局のところ、来年実施される経済政策の多くは、上院と下院の構成次第ということになる」と述べた。

ロイター
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