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アングル:自動運転車の開発競争、老舗メーカーとエヌビディア等の提携で再燃か

2026年01月17日(土)08時10分

米エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)。1月5日、米ラスベガスで撮影。REUTERS/Steve Marcus

Abhirup ‍Roy

[ラスベガス 16日 ロイター] - 自動運転車産業は、その短い歴‌史の中で、高い代償を払う失敗や、度重なる遅延に見舞われてきた。だが米半導体大手エヌビディアなどの技術サプライヤーや一部の自動車メーカーは人工知能(AI)との各種提携に賭け、新たな進展を実現しようとしている。

もっとも、自動車メーカーは依‌然として大きな問いを抱えている。高コストや​スケーラビリティー(拡張性)を巡る懸念に加え、多額を投資しても儲けが得られるだけの顧客需要があるのか、という疑問だ。

自動運転車は交通のあり方を変えそうだが、公道で安全に走行できるようにする取り組みは予想以上に困難で、高額の費用を伴っている。

米アルファベット傘下のロボタクシー部門ウェイモやテスラなど、一握りの企業は自社開発を決めたが、ゼネラル・モーターズ(GM)やフォード・モーターなどの老舗企業は完全自動‌運転車の社内プロジェクトを断念した。

1月上旬にラスベガスで開催された先端技術見本市「CES」で、米アマゾン・ドット・コムのクラウド部門、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)とドイツの自動車技術サプライヤー、オーモビオが自動運転車の商業展開を支援する契約を発表した。一方、自動運転トラック企業、コディアックAIと独自動車部品大手ボッシュは、自動運転トラック用ハードウエアやセンサーの製造強化に向けた提携を発表した。

エヌビディアがお披露目した次世代プラットフォームは、米EV企業ルシード・グループ、ニューロ、ウーバーが発表したロボタクシーの提携で採用される予定だ。

独メルセデスベンツは同じ週、米国で年内にエヌビディアのチップを搭載した先進運転支援システム(ADAS)を導入すると発表した。

AIは開発ツールとしても本格活用され始めており、コスト軽減につながるとの期待が高まっている。

AWSの自動車・製造部門ゼネラルマネー​ジャー、オズグル・トフムク氏は「AIと生成AIは業界にとって『大きな加速剤』になっている。はるかに少⁠ないリソースで、大量の開発と検証を可能にするからだ」と述べた。

欧米自動車メーカーは、自動運転車の開発や導入で主導権を握ろう‍とする中国の動きに追いつくことを迫られている。中国政府は昨年12月、ハンズオフ(手放し)運転を可能にする「レベル3」機能を備えた2車種を承認した。

だがドイツの半導体メーカー、インフィニオンのヨッヘン・ハネベック最高経営責任者(CEO)は、数年以内に完全自動運転車が普及するという「市場の幻想」に警鐘を鳴らす。

ハネベック氏によると、大手自動車メーカーは完全自動運転への新規投資というリスクを取る代わりに、「レベル2」の自動運転技術を追求している。レベル2はす‍でに入手可能な技術で、運転手が常に注意を払いながら運転する必要がある。

完全自動運転の「レベル5」へと向かう「津波‍のような流‌れは見えない」とハネベック氏は語った。

ここ数カ月、中国、米国、欧州、中東で小規模なロボタクシーの導‍入が相次いで発表されているが、オーモビオの自動運転モビリティー部門でシステム・ソフトウエア責任者を務めるジェレミー・マクレイン氏は、ロボタクシーの営業エリアを拡大するには、より多くのデータ、車両、物流が必要で、「コストが非常に高額だ」と話した。

<AIで弱点克服>

自動運転車は誇大広告が先行しており、実際には失敗や遅延続きだ。

テスラのイーロン・マスクCEOは2019年、1年後には数百万台の自動運転車が公道を走っているだろう、と大風呂敷を広げた。だがテスラが小規模なロボタクシ⁠ーの試験サービスを開始したのは、マスク氏の大胆な予測から6年後の昨年だった。

最初の自動運転車バブルがはじけた後、フォードとGMは赤字の自動運転車部門から撤退した。

ただエヌビディアの自動車チームのゼネラルマネージャー、アリ⁠・カニ氏は、AIによって自動運転技術の主な弱点に対処できるような進歩が‍実現したと指摘。「ついに達成した」と感じられるような、基盤の技術がいくつかあると語った。

モルガン・スタンレーのアナリストはCESに関するリポートで、エヌビディアの新しい自動運転向けプラットフォーム「アルパマヨ」について、老舗自動車メーカーに優位性を与え、テスラにプレッシャーを​与えるのに役立つ一方、テスラの方が数年先を行っていると評した。

それでも業界関係者の多くは、エヌビディアが提供するオープンソースのプラットフォームが、テスラの競合会社が集まる便利な場になるとみている。

自動運転開発企業、ズークス(Zooks)の元プロダクト責任者、ラッセル・オン氏はテスラの独自システムとオープンソースのアルパマヨを対比し「ある意味では、アップル対アンドロイドの構図の再現に映るかもしれない」と語った。

ロイター
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