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アングル:金利上昇局面の日本株、長期金利3.5%でも耐性の試算 銘柄選別も

2026年01月07日(水)16時21分

写真は円紙幣。2022年11月、都内で撮影。REUTERS/Kim Kyung-Hoon

Noriyuki ‍Hirata Hiroko Hamada

[東京 7日 ロイター] - 長期金利が27年ぶり高水準に上昇‌する中、株価へのネガティブな影響が意識され始めている。一方、堅調な企業業績を背景に、長期金利が3.5%程度まで上昇しても影響は限定的との見方もある。金利上昇に弱いとされるREIT指数は日銀の利上げ局面にありながら回復基調をたどっており、‌株高持続の手掛かりになりそうだ。

長期金利​が歴史的な高水準を更新し続ける中、日本株は「金利動向に敏感になってきてもおかしくない」とニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは指摘する。

元本と利息が保証される債券と違い、株式は元本保証がない。リターンも不確実で「リスクを背負う以上、長期金利と同じような配当利回りでは物足りなくなる」と井出氏は指摘する。

東証プライム市場の単純平均の配当利回りは、24年12月の2.26%から25年12月には2.21%に‌低下した。一方、長期金利は25年初の1.1%が足元で2.1%へと大きく上昇、その差は縮小してきている。

配当利回りが長期金利を下回る銘柄でも、AI(人工知能)・半導体関連株のように成長ストーリーがあれば株高は正当化され得る。一方、成長期待に乏しい銘柄は、配当目当ての投資対象から外されかねず「選別が進む可能性がある」(井出氏)という。

<業績が金利上昇を許容>

ただ、金利上昇が市場全体に与える影響は、それほど大きなものになるとはみられていない。理由のひとつは、インフレ好循環への思惑だ。三菱UFJアセットマネジメントの石金淳エグゼクティブファンドマネジャーは、足元で「値上げによる利益率改善への期待がある」と指摘する。

値上げが広がる一方、実質賃金がプラスに転じて定着するようなら「インフレの好循環が意識されるようになる。緩やかな金利上昇は株式市場でも許容され、株高は継続が見込まれる」(いちよ​しアセットマネジメントの秋野充成社長)との見方がある。実質金利はマイナス圏で、金融緩和状態は継⁠続している。

海外勢の動きも後押しする。大発会の日経平均は一時1700円近く上昇するなど、意外高となったが、年始が事業年度の期初‍に当たった海外投資家が日本株を積み増したとの観測が聞かれた。

フランス系資産運用会社コムジェストのポートフォリオマネージャー、リチャード・ケイ氏は「インフレ転換の動きを踏まえ、日本株ウェートの引き上げを検討している海外投資家は少なくない」と指摘する。

企業業績は名目値で示されるため、値上げできる企業は売上増によって利益が伸びやすい。日本株は25年に米国株を上回るパフォーマンスだったこともあり、グローバル投資家には「出遅れが意識される内需株‍を中心に、持たざるリスクが意識されてきている」(コムジェストのケイ氏)という。

りそなホールディングスの武居大‍輝市場企画‌部ストラテジストは、長期金利3.5%程度までなら株価は耐えられそうだとみる。日本企業が真に高収益体質‍に「脱皮」できるのであれば、高金利の逆風下でも高いバリュエーションが許容され得るとの見方だ。

売上高経常利益率が25年度と26年度に各1%改善し、自己資本利益率(ROE)が10%に高まるとの仮定では、TOPIXの株価収益率(PER)は過去20年の12─16倍から14─18倍へと許容水準が切り上がると武居氏は試算。長期金利3.5%まではROE改善によるPER押し上げが金利上昇による下押しを上回ると指摘する。

日銀による利上げのターミナルレート(最終到達点)が見極めにくいことも、株高持続に好都合な面がある。いちよ⁠しAMの秋野社長は、金利先高観(債券は先安観)が継続する限り、株式から債券への資金シフトは「腰の入った取り組みを想定しにくい」との見方を示す。

<REITにみるインフレ好循環>

企業間取引(BtoB)の領域ではインフレ好循環がみられている⁠。REIT指数は、25年に年初から回復基調をたどり、2割上昇した。

オフィス‍賃料の着実な高まりが背景にある。三鬼商事によると、東京ビジネス地区の平均賃料の変動率は24年5月に前年同月比でプラスに転じ、25年11月は5.2%高となった。一方、平均空室率は24年12月の4.0%が25年11月には2.4%に低下。「(オフィスの借り手企業は)業績が堅調な中、賃料が上昇しても支払​う能力がある」(東海東京インテリジェンスラボの中村貴司シニアREITアナリスト)といった構図がうかがえる。

REITの回復はBtoBの不動産でのインフレ好循環を示唆する手掛かりのひとつになる。こうした動きが個人消費(BtoC)に広がれば、インフレ好循環の思惑拡大につながり得る。

ただ、賃上げが物価上昇に対応していけるかは依然、不透明でもある。いちよしAMの秋野氏は「実質賃金が改善し、消費拡大が確認できるかが重要」と指摘している。

ロイター
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