アングル:ワーナー買収合戦、トランプ一族の利益相反と疑念噴出
写真はワーナー・ブラザース・ディスカバリーのロゴとトランプ米大統領の人形の横顔のイメージ。12月8日撮影。REUTERS/Dado Ruvic
Jody Godoy
[ワシントン 8日 ロイター] - 米メディア大手ワーナー・ブラザース・ディスカバリーに総額1080億ドルでの敵対的な買収を提案した同業大手パラマウント・スカイダンスに対し、トランプ米大統領の娘婿ジャレッド・クシュナー氏の投資会社アフィニティ・パートナーズが資金調達役を担うことがトランプ一族による利益相反に当たるとの疑念が生じている。
ワーナーは動画配信大手ネットフリックスが買収することで合意していたが、パラマウントが8日に対抗買収を提案したことで近年最大級のメディア争奪戦に突入した。パラマウントとネットフリックスのどちらに軍配が上がっても、消費者や競合他社、供給業者が不利益を被らないように反トラスト法(独占禁止法)の厳しい審査を受ける見込みで、トランプ氏は7日にネットフリックスによるワーナー・ブラザース買収を承認するかどうかの決定に関与すると発言していた。
パラマウントは買収資金としてアフィニティに加え、サウジアラビアとカタールの政府系ファンド、アラブ首長国連邦(UAE)が所有するリマド・ホールディングからも調達すると公表した。
トランプ氏は8日に記者団に対し、クシュナー氏とはワーナー・ブラザースについては話していないとし、ネットフリックスとパラマウントはともに「私の友人ではない」と主張した。
ただ、トランプ氏の大統領復帰後の今年に入ってから同氏の同族企業が利益を増やした中で、買収合戦にどこまで関与するのかは利益相反の規範をどこまで破る用意があるかの試金石となる。
米東部メーン州ポートランドに拠点を置くバリューエッジ・アドバイザーズのネル・ミノウ会長は「ビジネススクールで利益相反を教えるのならば、これが典型例となる」とし、トランプ氏は買収承認への関与から自ら身を引くべきだと訴えた。
ホワイトハウスおよびアフィニティの報道担当者は、コメント要請に即座には応じなかった。
政治を監視する市民団体「ワシントンの責任と倫理を求める市民」(CREW)のジョーダン・リボウィッツ氏は「通常の大統領は国民から疑われる行動を避けるために自身の事業から距離を置き、家族事業に関与しないよう細心の注意を払う」と指摘した。
<以前から噴出されていた疑問>
クシュナー氏は第1次トランプ政権で大統領上級顧問を務め、2期目でも公式の肩書はないものの中東政策に関与し続けている。
義父の大統領職によってクシュナー氏が利益を得ているのではないかという疑問は以前から噴出していた。
トランプ氏は今年、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘で荒廃したパレスチナ自治区ガザを整備し、国際的なビーチリゾート地として開発すべきだと提案した。これは米ニューヨークで不動産開発事業を手がけていたクシュナー氏が提唱した構想を反映している。
トランプ氏が再選を目指して大統領選を戦っていた昨年、アフィニティには中東の投資家から資金が流入していた。
公益団体「政府監視プロジェクト」のスコット・エイミー法務顧問は「政府運営と家族企業の利害関係の線引きは日々あいまいさを増している」と問題視。トランプ氏について「ワーナー・ブラザースを巡る取引に関するいかなる発言や行動も避け、パラマウントとつながった娘婿(のクシュナー氏)を助けているという疑惑から距離を置く」ことが求められていると強調した。
トランプ氏の総額数十億ドル相当の不動産とゴルフ場、メディア事業を含めた全ての事業利益は、同氏の子供たちが管理する信託に委ねられている。
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