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アングル:米企業の利益成長率、鈍化の見通し AI投資に注目高まる

2025年10月10日(金)17時40分

 10月9日、米企業の第3・四半期の利益成長率はトランプ政権の関税の打撃も一部あるとみられるため、年初に比べてやや鈍化する可能性があるだろう。2023年6月撮影(2025年 ロイター/Dado Ruvic)

Caroline Valetkevitch

[ニューヨーク 9日 ロイター] - 米企業の第3・四半期の利益成長率はトランプ政権の関税の打撃も一部あるとみられるため、年初に比べてやや鈍化する可能性があるだろう。一方で投資家は人工知能(AI)を巡る巨額の設備投資が実を結びつつあるのかどうかに注目している。

トランプ大統領が当初4月、輸入品に対して包括的な関税を発表した後も、大半の米企業は予想を上回る利益をどうにか確保できてきた。だが、トランプ氏の貿易政策の全体的な影響がどうなるのかは不透明なままだ。

今年は新たに脚光を浴びたAI技術に対する期待がウォール街の株価指数を史上最高値に押し上げており、投資家は関税やその他のリスクよりもAI関連の設備投資をより重視する可能性が高いだろう。

LSEGの最新予測によると、S&P総合500種構成銘柄の企業は第3・四半期の利益が前年同期比で8.8%増加すると見込まれる。2025年の第1、第2・四半期はいずれも13%以上の伸び率だった。

決算シーズンは来週、米大手銀行の発表で本格化する予定だ。

ミシガン州トロイにあるアメリプライズ・フィナンシャルのチーフ市場ストラテジスト、アンソニー・サグリムベネ氏は、時価総額が非常に大きい企業の「マグニフィセント・セブン」やAI開発を先導する企業の決算が「非常に力強い結果になる可能性がある」と述べた。一方で「投資家は一部の設備投資に関する説明について懐疑的になるだろう」とし「投資家は費やされている資金と投資収益をこれまで以上にやや心配し始めている」と語った。

LSEGデータストリームによると、S&P総合500種は現在、今後12カ月の予想利益の約23倍で取引されており、過去10年間の平均である18.7倍を大きく上回っている。特に時価総額が非常に大きいテクノロジー株や成長株の高バリュエーションは、AI投資を巡る懸念と相まって特定のリスク要因になっている。

企業は引き続きAI関連に資金を投入するとともに事業案件の交渉を加速している。例えばAMDは今週、オープンAIに複数年契約でチップを供給すると発表した。

10月1日に始まった米連邦政府の閉鎖で経済統計の発表が滞っているため、投資家はとりわけ企業決算のガイダンスを確認したいという要求がかなり高まっている。

情報が入手できない結果、経済が現在どのような状態なのか、米連邦準備理事会(FRB)がどのように政策金利を調整するのか、理解するのがこれまでよりも難しくなっているのだ。FRBは先月、労働市場が弱いとして24年12月以来の利下げに踏み切った。

米金融大手ゴールドマン・サックスの米国株式チーフストラテジスト、デービッド・コスティン氏らはそれでも、第3・四半期の経済データがおおよそ堅調だったため、S&P総合500種構成銘柄の企業の利益と売上高は伸び率が市場予想を上回るだろうと予測している。

ゴールドマン・サックスのストラテジストたちの最近のリポートによると、企業は第3・四半期に関税の影響が「第2・四半期より大きかったと思われる」にもかかわらず利益率を維持したとみており、関税収入はこの期間に33%増の930億ドルに達したと述べた。

LSEGによると、S&P総合500種構成銘柄の企業は第3・四半期の売上高が前年同期比で5.7%増と見込まれている。第2・四半期は6.4%増、第1・四半期は5%増だった。

S&P総合500種構成銘柄の企業は第2・四半期の利益が13.8%増加したが、7月初旬時点のアナリスト予想は5.8%増にとどまっていた。

ロイター
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