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マクロスコープ:暑すぎる夏 食費や電気代、、家計負担さらに重く 政局に影響も

2025年07月09日(水)10時23分

 7月9日、暑すぎる夏が政局の行方を左右するかもしれない──。今年は観測史上最も暑かった6月に続き、7月も「10年に1度」という猛暑が予想されている。写真は2024年7月、都内で撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)

Yusuke Ogawa

[東京 9日 ロイター] - 暑すぎる夏が政局の行方を左右するかもしれない──。今年は観測史上最も暑かった6月に続き、7月も「10年に1度」という猛暑が予想されている。気温が上昇するとビールやアイスクリームの売り上げが伸びるなど関連消費が活発になるが、問題は程度だ。

35度を超える厳しい暑さが続けば、エアコンの連続稼働で電気代がかさむほか、高温による生育不良から野菜の価格が高騰。夫婦と子供二人の標準世帯で、月に最大2万5000円の負担増になるとの試算もある。ただでさえコメの値上がりが家計を圧迫する中、物価高への対策を求める声が一段と強まる可能性がある。

早くも列島に夏本番が到来している。北海道帯広市の「十勝星空ビアガーデン」は、例年より2週間ほど早い6月16日に今シーズンの営業を始めた。道内では6月に8日連続の真夏日(最高気温30度以上)を記録。全国各地でも異例の暑さが広がり、東京都心は真夏日が合計13日に達して過去最多を更新した。気象庁によると、同月の国内の平均気温は平年よりも2.34度高く、統計を始めた1898年以降で最も暑かったという。

一般的に、暑い夏は夏物商戦が活気づく。清涼飲料水や衣類のほか、紫外線対策ができる化粧品や冷蔵庫といった幅広い商品の販売が伸長。日照時間が長くなれば、外出する人が増え、プールやテーマパークなどの屋外レジャー施設は混雑する。夏場の平均気温が1度上昇すると約2600億円の個人消費の押し上げ効果が期待できるとの見方もある。

だが酷暑が連日続けば、かえって景気の足かせにもなりうる。第一生命経済研究所の新家義貴氏は「特に電気代の増加に注目すべきだ。エアコンの稼働時間が増えることで家計への負担が大きくなる」と指摘する。政府は物価高対策として電気・ガス料金の補助金を7月から期間限定で再開したが、再生可能エネルギーの普及を目的とした「再エネ賦課金」の引き上げと重なり、電気代の水準自体は高止まりする見込みだ。

さらに、野菜などの農作物の不作も懸念されている。キュウリやトマトをはじめとした果菜類は高温にさらされると、生育不良になる確率が高まる。今年は多くの地域で早めに梅雨明けしたことから水不足のリスクも高まっているとされ、生産量が減少して夏野菜が値上がりするとの不安がくすぶる。また、猛暑で親鶏の産卵率が低下し、鶏卵価格が上昇することも心配されている。

もちろん危険レベルの暑さになれば外出を控える人が相次ぎ、旅行やレジャー費用が減るため、そのまま家計全体の出費増につながるとは言い切れない。だが、同研究所が人工知能(AI)を用いて試算したところ、異常気象の頻度を高める「ラニーニャ現象」が強まり、記録的な猛暑や水害が全国的に発生した場合、食費と光熱費のコストアップが標準世帯で月1万3000円-最大2万5000円に達する恐れがあるという。猛暑日が続くものの、大規模な天候不順は限定的というメーンシナリオ(発生確率55%)でも、例年に比べて月5000円-9000円程度の負担増が見込まれる。

連合が3日公表した2025年春季労使交渉(春闘)の最終集計結果では、賃上げ率の平均は5.25%と2年連続で5%台を確保したが、トランプ関税に伴う雇用不安は根強く、一般家庭の生活防衛意識は高まっている。猛暑によって「物価高の第二波」が起きれば、20日投開票の参院選やその後の政権運営に影響を及ぼす展開もありそうだ。

●背景となるニュース

*5月実質賃金2.9%減、5カ月連続 1年8カ月ぶりマイナス幅

*キュウリ、ピーマン3割高 気温不安定で夏野菜不足 猛暑も懸念、家計負担

*与野党、過半数競る 自民減の公算、立民堅調 国民伸長、参政に勢い 参院選序盤調査

(小川悠介 編集:橋本浩)

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