アングル:米国の通関手続き複雑化、関税で代行業者に脚光

6月11日、 米国の輸入業者の間で、貿易貨物の輸出入に関する通関手続きを代行する「カスタム・ブローカー(税関貨物取扱人)」の利用が増えつつある。写真は5月、ロサンゼルス港に積まれたコンテナ(2025年 ロイター/David Swanson)
Arriana McLymore Nicholas P. Brown
[ニューヨーク 11日 ロイター] - 米国の輸入業者の間で、貿易貨物の輸出入に関する通関手続きを代行する「カスタム・ブローカー(税関貨物取扱人)」の利用が増えつつある。目まぐるしく変更されるトランプ米政権の関税措置に対応するためだが、ブローカーは引き合いが増えるとともに利用料金が割高化。輸入業者にとっては、関税絡みのコストが一層増大する形になっているもようだ。複数の業界関係者がロイターに明かした。
米国でカスタム・ブローカーは全く目立たない存在だった。市場調査会社が推定する業界規模は約50億ドル。輸入業者にとってカスタム・ブローカーを雇うかどうかは任意だが、米国の関税・税関手続きは複雑さが増す一方なので、料金を支払ってでもブローカーに頼ろうとする動きが広がってきた。
米南部テキサス州ラレドに拠点を置くJDゴンザレスのような独立系ブローカーには、税関・国境警備局(CBP)に対してどのような手続き義務を負うのか、あるいは出荷作業を進めるべきか待つべきか、といった問い合わせが毎日のように殺到している。
ブローカーの書類作成にかける時間や労力もかつてないほど増えており、新たなITシステムを導入するケースも見られる。
自分の氏名を社名にしたJDゴンザレスの経営者は「われわれが処理すべき全ての新たな情報を踏まえると、これまで使っていたシステムの一部は役に立たなくなり、仕事量が増えている」と明かした。ゴンザレス氏はカスタム・ブローカーの業界団体NCBFAAの会長も務めている。
スポーツ用品のナイキや、インターネット通販アマゾン・ドット・コム、ホームセンターのロウズといった大手企業は、社内での貿易事務の法令順守強化に向けて、専門人材の募集も行っている。
例えばナイキは「当社の将来における貿易法令順守の枠組み構築において重要な役割を担う」貿易と税関の責任者の求人をサイトに掲載。アマゾンが行っている米国の税関手続き代行の求人は少なくとも10件、ロウズは3件に上る。
<追加費用を上乗せ>
独立系カスタム・ブローカーがしばしば料金設定の基準として用いるのは、輸入品の関税率計算に使われる統一関税率表(HTS)コードの入力数だ。CBP職員はこのコードに基づいて輸入品の税率を決める。
トランプ関税出現以前のカスタム・ブローカーの料金は、コード1つ当たりで4-7ドル前後。しかしゴンザレス氏は、ブローカー側が関税のさまざまな変更に対処するためシステムの強化で追加費用がかかるようになり、一部ではコード1つ当たり1-5ドルほど料金が上乗せされていると述べた。
米北西部シアトルとカナダのバンクーバーに拠点があるA&Aカスタムズ・ブローカーズのスティーブ・ボジシェビッチ最高経営責任者(CEO)は、商品には複数の関税を積み重ねる形で適用されるため、米国に輸入される製品の種類ごとに3ドルの料金を追加したと話す。
ボジシェビッチ氏は「われわれは米国の輸入品の取り扱い料金を引き上げた。新しく発生し、増幅された複雑さが理由だ」と説明し、カナダの輸入品は手続きが従来と変わらないため値上げしていないと付け加えた。
運輸大手ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)は昨年12月、カスタム・ブローカー料金を輸入元の国・地域に応じてHTSコード1つ当たり3.75-50ドルの幅で引き上げた。ただ同社広報担当者はロイターに、これは全般的な値上げの一環で関税の変更とは関係ないと述べた。同業フェデックスの物流部門は今年1月、カスタム・ブローカーの基本料金を4%引き上げている。
越境出荷サービスにカスタム・ブローカー業務を含めているこれらの企業は、人員増強にも取り組んでいる。ドイツのDHLは今年2月以降で、米国の通関手続きチームの人数を30%増やした。
フェデックスは10日時点で、リンクトインを通じて主として米国に拠点がある税関・貿易チームの求人を40件余り掲載。UPSも同様の米国での仕事に関して10件の求人を出している。
フェデックスの広報担当者は、関税を巡り変化が続く状況下で需要に対応するため、追加の人材採用を含めて自社ネットワークを調整しているとコメントした。