FRB、年内利下げ可能 関税による物価圧力は一時的=ウォーラー理事

6月2日、米連邦準備理事会(FRB)のウォーラー理事(写真)は、トランプ政権の関税政策により一時的に物価圧力が高まる可能性があるものの、年内に追加利下げを行う可能性はなおあるとの認識を示した。写真は2024年11月、ニューヨークで撮影(2025年 ロイター/Brendan McDermid)
Michael S. Derby
[2日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のウォーラー理事は2日、トランプ政権の関税政策により一時的に物価圧力が高まる可能性があるものの、年内に追加利下げを行う可能性はなおあるとの認識を示した。
ソウルで講演し、トランプ大統領の関税措置に伴うインフレ圧力の高まりが長く続かない可能性が高いことから、「政策金利を設定する際に、短期的なインフレに対する関税の影響を一時的なものと捉えることを支持する」と述べた。
関税が予想範囲の下限に落ち着き、「基調的なインフレ率が引き続き2%の目標に向けて前進し」、雇用部門が依然として堅調なら、「年内には『良いニュース』となる利下げを支持するだろう」と発言。
また、「幸いにも、強い労働市場と4月までのインフレにおける進展は、貿易交渉がどう展開するか、そして経済がどう進むかを見極める追加の時間を与えてくれる」と語った。
ウォーラー氏は、経済状況が許せば年内の利下げに前向きな姿勢を示すが、他のFRB高官らは利下げに慎重な姿勢を取っている。同氏は関税による経済への影響は今のところほとんどないが、状況は変わる可能性もあると指摘。
「2025年後半には経済活動と雇用に下振れリスク、インフレに上振れリスクがあるとみているが、こうしたリスクの進展は貿易政策の進展に大きく左右される」とし、「関税が上がれば支出は減り、企業は生産と従業員数を減らすという反応をするだろう」と語った。
<関税の影響は一時的か>
また、関税がインフレを引き上げる主な要因となるものの、一時的な可能性が高いと予想し、「25年後半に最も顕著になる」と述べた。大規模な関税が導入されるというシナリオのリスクは低下したとの見方も示した。
さらに、関税によるインフレへの影響を巡り不安が生じている理由の一つに、新型コロナウイルス禍の物価上昇圧力は長続きしないとの見方が間違っていたことがあると指摘。ただ、当時インフレが持続した要因は現在見られないと述べた。
他にも、インフレ期待に関するデータに乖離が生じているとし、市場見通しや専門的な予測をより注視しているとし、実際のデータもインフレの予想経路で大きく悪化していないと分析した。
このところの米国債利回り上昇にも言及し、政府の借入増加と米国資産に対する外国人投資家の警戒感によるものだと発言。また、トランプ政権からの一部のメッセージで「外国人による資産購入は歓迎されないという姿勢が示されたようだ」とし、これが一部の外国人投資家を遠ざけていると指摘した。