「過去最高の税収増」の皮肉...トランプ関税が米雇用を減らし低所得者をさいなむ現実

トランプはUSスチールで鉄鋼関税の効果を強調したが(5月30日) LEAH MILLISーREUTERS
<トランプ関税は確かに税収増をもたらしたが、それを財源にして直ちに大幅減税が実現するというほど話は単純ではないようだ>
トランプ米大統領の関税政策は、米国内の物価上昇や貿易相手国による報復措置など、数々の経済的混乱をもたらしている。しかし、ある目を見張る結果も生んでいる。
アメリカの関税収入が急増しているのだ。5月の関税収入は、昨年5月の約3倍に相当する230億ドル近くに達し、1カ月当たりの過去最高額を更新した見通しだ。ペンシルベニア大学経営大学院が米財務省のデータを分析した結果によると、今年の関税収入はこれまでの合計で682億3000万ドル。前年同期間の78%増となっている。
トランプに言わせれば、同政権の関税政策はアメリカの製造業を再建すると同時に、所得税に頼らずに政府が予算を確保する手だてでもあるという。関税収入により、将来は連邦所得税を廃止できると、トランプ政権は主張している。
もっとも、話は単純ではない。関税は輸入品に対して課される税金だ。従って、まずアメリカ企業が輸入時に税を負担する。しかし、経済学の研究によると、そのコストは最終的に国内の消費者に転嫁される。商品価格が押し上げられるからだ。