ニュース速報
ビジネス

アングル:FRB当局者、利下げの準備はできていると示唆 2週間後のFOMC控え

2024年09月08日(日)08時27分

 米連邦準備理事会(FRB)の政策担当者らは6日、政策転換がなければ労働市場の冷え込みがさらに深刻な状況に陥る恐れがあると指摘し、2週間後の連邦公開市場委員会(FOMC)で一連の利下げを開始する用意があることを示唆した。写真はFRB本部ビル。2022年6月撮影(2024年 ロイター/Sarah Silbiger)

[6日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)の政策担当者らは6日、政策転換がなければ労働市場の冷え込みがさらに深刻な状況に陥る恐れがあると指摘し、2週間後の連邦公開市場委員会(FOMC)で一連の利下げを開始する用意があることを示唆した。

今回の発言は0.25%ポイントの利下げを支持するもので、労働市場が引き続き減速した場合には、より大きな動きを起こす可能性を残していると受け止められている。

政策当局は1年半前、インフレ加速を抑制するため積極的な利上げを実施した後、2023年7月以降は政策金利を現在の5.25―5.50%の範囲に維持している。

インフレ率は現在、22年半ばのピークである7%前後から大幅に低下した。FRBが利上げを停止した時点で3.5%だった失業率は現在4.2%に上昇し、月間雇用の伸びは鈍化している。

FRB関係者は金融政策の方針転換を行い、インフレ抑制のみに焦点を当ててきた政策を変更。雇用支援に重点を移した。

ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は外交問題評議会での講演で「フェデラルファンド(FF)金利誘導目標を引き下げ、政策スタンスの引き締めの度合いを緩和することが適切になっている」と述べた。

ノートルダム大学で講演したFRBのウォラー理事は、経済指標で裏付けられれば、連続した利下げ、あるいはより大規模な利下げを支持する可能性があると、さらに踏み込んだ発言をした。

さらにウォラー理事は「22年にインフレが加速した際に利上げを前倒しで実施していくことを強く支持した。適切なら(同様に)前倒しで利下げを実施することを主張する」と述べた。

シカゴ地区連銀のグールズビー総裁は、数カ月にわたり金利を引き下げる必要があるとの考えを示しており、今後のデータに基づいて政策を調整したいとの意向を示した。

グールズビー総裁はCNBCとのインタビューで「次回の会合で何が起こるかだけが最も重要なことではないと思う」と述べ、FRBにとって今後数回の政策会合でデータの傾向を把握することが重要だと付け加えた。

これらの発言に関してアナリストらは、メッセージは明確だとみている。

ゴールドマン・サックスのエコノミストらは、FRB当局者による金融政策に関する最近の発言内容を要約。「当局者らは9月のFOMCでは25ベーシスポイント(bp)の利下げを基本シナリオとみているが、労働市場の悪化が続けば、その後の会合で50bpの利下げも検討する可能性がある」とした。

FRBのパウエル議長は8月23日、政策を調整する「時期が来た」と発言し、9月の利下げ規模に関する激しい憶測が巻き起こった。

ウォラー理事はこれに同調し、「複数回の利下げが適切となる可能性が高い」と述べた。

<「空は落ちてこない」>

米労働省が6日発表した雇用統計によると、6―8月の3カ月間の雇用者数の増加数は月平均で11万6000人に縮小。人口増加に伴う雇用増加のニーズを満たすのに必要だと多くの経済学者が推定する数を下回った。

ウォラー理事は、最新の雇用報告は他の最近のデータとともに「労働市場の緩和が続いているとの見方を強める」と述べた。

さらに、データは景気の鈍化を示すものの悪化は示しておらず、経済が景気後退に向かう様子はないとの見解を明らかにした。ただ「現在の一連のデータはもはや忍耐ではなく、行動を必要としている」と述べた。

金利先物のトレーダーは現在、25bpの利下げを75%と見積もっている。年末までに政策金利が4.25―4.50%になると見込んでおり、FRBが今年最後の2回の会合のいずれかで大幅な利下げを行うことを示唆している。

レイモンド・ジェームズのチーフエコノミスト、ユージニオ・アレマン氏は「労働市場が減速しているのは明らかで、FRBは行動を開始する必要がある」と述べた。

ただ「空が落ちてくるわけでも、地震が起きているわけでもない。50bpの利下げは、経済が崩壊しつつあるという誤ったシグナルを市場に送ることになる」と述べ、「FRBはそのような事態は望んでいない」と語った。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは154円後半、米雇用統計控え上値重

ワールド

インド総合PMI、12月は58.9に低下 10カ月

ビジネス

プライベートクレジット、来年デフォルト増加の恐れ=

ワールド

豪銃撃、容疑者は「イスラム国」から影響 事件前にフ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 8
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中