ニュース速報
ビジネス

テスラ「新モデル」前倒しへ、株価急伸 現行車台・生産ラインで

2024年04月24日(水)12時08分

米電気自動車(EV)大手テスラは23日、新型モデルの発売を前倒しすると発表した。2021年10月撮影(2024年 ロイター/Edgar Su)

Hyunjoo Jin Akash Sriram

[23日 ロイター] - 米電気自動車(EV)大手テスラは23日、現在のプラットフォーム(車台)と生産ラインを使った「新しいモデル」を計画より前倒しして2025年の早い時期に投入すると発表した。これを受け、株価は引け後の時間外取引で12.5%上昇した。

イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)はアナリスト向け電話説明会で、新型モデルの生産を25年の早い時期、場合によっては今年終盤に開始すると表明。同氏は1月に次世代低価格EV「モデル2」を25年後半に発売する目標を設定していた。

ロイターは今月上旬、事情に詳しい複数の関係者の話として、テスラがモデル2の開発を中止したと報じた。モデル2は販売価格を約2万5000ドルに抑え、テスラが大衆向け自動車メーカーへと成長する原動力になると期待されていた。

マスク氏は当時、「ロイターはうそをついている」とXに投稿していた。

この日言及した新型モデルはこれとは別の製品とみられる。テスラもマスク氏もロイターの報道には直接触れなかった。

新型モデルは現在の製造ラインで製造され、現在のプラットフォームと次世代プラットフォームの要素が採用されるという。テスラは「コスト削減は従来想定ほどではないかもしれない」と指摘。モデル2の予想価格が2万5000ドルよりも大きくなる可能性を示唆した。

完全自動運転車「ロボタクシー」についても言及したが、発売時期は明らかにしなかった。

ロイターは今月上旬、テスラがモデル2向けに開発していたプラットフォームでロボタクシーの開発を続ける計画だと報じていた。

マスク氏は、新型モデルが現行EVを一部あるいは完全に刷新したものになるかとのアナリストの質問には回答を避けた。

テスラのエンジニアリングチーフ、ラース・モラビー氏は、「革命的な」製造プロセスに投資するリスクを回避することになると発言。マスク氏は以前、手頃な価格の新型車は製造技術革新の実験台になると語っていた。

ガイドハウス・インサイツのアナリスト、サム・アビュエルサミド氏は「新型プラットフォーム(開発)が棚上げたされたことは明白なようだ」と指摘。新たな生産施設や既存工場の刷新に多額の資金を投じる考えがないため、現行品の生産を継続することになるだろうと述べた。

テスラは新型モデルの計画により「不確実な時期」に設備投資をより良く管理できるようになるとした。

<低調な決算>

この日発表した第1・四半期決算(3月まで)は売上高が213億ドルと前年同期の233億3000万ドルから減少。LSEGがまとめた市場予想は221億5000万ドルだった。世界的な需要鈍化と競争激化で納車台数が減少した。

減収となるのは新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)により生産と納車が妨げられた20年第2・四半期以来。

度重なる価格引き下げの影響を反映し、1台当たりの平均売上は前年同期から5%近く低下し、4万4926ドルだった。

純利益は11億3000万ドル。前年同期は25億1000万ドルだった。

低調な決算にもかかわらず、手頃な価格の車両計画は投資家に歓迎されたが、懐疑的な見方もある。

フリーダム・キャピタル・マーケッツのチーフ・グローバル・ストラテジスト、ジェイ・ウッズ氏は「有望に聞こえるが、テスラはこれまでの展開の遅れを見るにつけ、『show-me(証拠を見るまで信じられない)』銘柄になりつつある。もし実現できるなら素晴らしい」と語った。

<「AIロボティクス企業」>

一方、マスク氏はテスラを今後、人工知能(AI)やヒト型ロボット、自動運転車を使ったサービスに多角化させるビジョンを示した。テスラは自動車メーカーではなく「AIロボティクス企業と見なされるべきだ」と強調した。

同氏は、自社の自動運転車は「(民泊仲介大手の)エアビーアンドビーと(配車大手の)ウーバーを組み合わせたようなもの」になると説明。一部車両はテスラが所有・運営し、他の車両は個人が所有するがテスラのネットワークで貸し出されるという。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ米政権、電力施設整備の取り組み加速 AI向

ビジネス

日銀、保有ETFの売却開始を決定 金利据え置きには

ワールド

米国、インドへの関税緩和の可能性=印主席経済顧問

ワールド

自公立党首が会談、給付付き税額控除の協議体構築で合
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中