ニュース速報
ビジネス

アングル:日本株高、海外勢の円売り需要惹起 投機追随で影響広範に

2024年02月29日(木)17時22分

 2月29日、為替市場では、年初から続く日本株高と円売りフローの関係が注目されている。東京都内で22日撮影(2024年 ロイター/Issei Kato)

Shinji Kitamura

[東京 29日 ロイター] - 為替市場では、年初から続く日本株高と円売りフローの関係が注目されている。海外投資家が保有する日本株の評価益拡大に伴い、為替リスクのヘッジ(回避)目的で大規模な円売りが出されており、その規模は10兆円を超えるとの推計もある。投機筋の思惑を巻き込みながら、円は対ドルだけではなく、広範な通貨に対して歴史的な安値圏に落ち込んでいる。

<日本株10%上昇で8兆円の円売り需要>

日経平均株価の史上最高値更新により、為替市場で注目が高まってきたのが、海外投資家による巨額の円売りだ。

日本株を買い入れる際、為替変動の影響を避ける戦略を採用する海外勢は、保有する円資産額、つまり円買いポジションに応じて、円を売り建てて影響を相殺する。

思惑通り株価が上昇すれば評価額が増えるため、その分、さらに為替ヘッジも積み増す必要が生じる。この追加的な円売りが、最近の日本株高と円安の同時進行を支える一因となっている。

海外投資家の為替売買やヘッジ状況などを表すデータはないが、シティグループ証券通貨ストラテジストの高島修氏によると、日本株投資で為替ヘッジを採用する海外投資家はおおむね3割程度。

外国人持ち株比率や東証時価総額などを考慮して試算すると「株価が10%上昇すると、8.3兆円ほどの円売りが発生する計算になる」という。

高島氏はこの推計を「議論を深めるための参考に過ぎない」と断るが、日経平均の直近高値は27日日中につけた3万9426円と、昨年末から18%上昇した水準にある。推計をそのまま当てはめると、年始から15兆円近い円売りが発生した可能性があることになる。

15兆円規模の円売りとは、年間で過去最大の貿易赤字を記録した2022年の20兆3295億円には及ばないものの、直近発表の1月の月間貿易赤字額の8カ月分に相当する。

<投機の円売り対ドル以外に、介入警戒強く>

円安圧力が一段と高まる一方、円買い介入への強い警戒感から、ドルはこの半月ほど150円台を上限に値動きが鈍っている。市場が想定する政府の「防衛ライン」は152円前後で、円売り戦略を採ることが多い個人投資家も「150円後半から151円台は一転して売り越しへ転じる」(FX会社幹部)という。

その結果、行き場を失った投機の円安圧力は、対ドル以外にあふれ出る形となってきた。

今週までにスイスフランが171円後半と史上最高値、カナダドルが111円台と17年ぶり高値を更新したほか、ポンドは191円前半、豪ドル99円前半、NZドル93円半ばと、ともに2015年以来9年ぶり高値をつけた。ユーロも162円台と3カ月ぶり高値圏を推移している。

りそなホールディングス、シニアストラテジストの井口慶一氏は、「日銀連続利上げ観測の後退などで、円は主要通貨間で最弱との見方が一般的となっている。介入警戒でドルの上値が伸びないため、投機の円売りが他通貨に逃げやすくなっている」と解説する。

米商品先物取引委員会(CFTC)がまとめたIMM通貨先物の非商業部門の取組状況によると、投機の円売りは今月20日時点で、6年ぶり高水準を記録した昨年11月以来の水準へ膨らんだ。

市場では「巻き戻しで円が買われる場面があれば、円売りのいい仕込み場になる」(外銀関係者)との声も出ている。

(基太村真司 編集:橋本浩)

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米ホリデーシーズンのオンライン支出、過去最高の25

ワールド

米、ベネズエラ原油取引・収入の管理必要 影響力確保

ワールド

トランプ氏、NATO支持再確認 「必要なときに米を

ワールド

トランプ氏との会談望む、同盟国から安全保証の明確な
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじゃいる」──トランプの介入口実にデンマーク反発
  • 4
    日本も他人事じゃない? デジタル先進国デンマークが…
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    マドゥロ拘束作戦で暗躍した偵察機「RQ-170」...米空…
  • 7
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 8
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び…
  • 9
    衛星画像で見る「消し炭」の軍事施設...ベネズエラで…
  • 10
    若者の17%が就職できない?...中国の最新統計が示し…
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 10
    感じのいい人が「寒いですね」にチョイ足ししている…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中