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ロイター企業調査:年内デフレ脱却が3割、7割は黒田氏続投希望

2018年01月23日(火)11時24分

 1月23日、1月ロイター企業調査では、日本経済のデフレ脱却は可能との見方が以前より増え、年内までに可能との回答がおよそ3割を占めた。まもなく任期を迎える黒田日銀総裁には、続投が望ましいとの回答が7割を占めた。写真は日銀の同総裁。昨年12月に日銀本店で撮影(2018年 ロイター/Issei Kato)

[東京 23日 ロイター] - 1月ロイター企業調査では、日本経済のデフレ脱却は可能との見方が以前より増え、年内までに可能との回答がおよそ3割を占めた。今年値上げ実施予定の企業も概ね4割と以前より増加、日銀による緩和強化を望む声は減少しつつある。

マイナス金利政策をやめるべきかどうかは賛否が拮抗。まもなく任期を迎える黒田日銀総裁には、出口に誘導すべき責任があり、続投が望ましいとの回答が7割を占めた。

この調査は、資本金10億円以上の中堅・大企業400社を対象に1月4日─17日に実施。回答社数は240社程度。

<今年までにデフレ脱却35%、「困難」は7割から4割に減少>

2013年初に企業マインドが上昇傾向に転じて5年が経過、デフレ脱却は困難とみていた企業は、16年5月調査では7割を占めていたが、今回調査では4割に減少。既に脱却、あるいは今年中の脱却を見通す企業は合計で35%を占めた。

国内景気拡大がいつまで続くかは今年後半から20年まで見方が割れたが、継続を阻害する要因として18年中は北朝鮮問題を、19年中は消費増税、20年中はオリンピック需要の反動と、社会保障負担増大を挙げる回答が多かった。

物価動向については、今年自社の主要製品の値上げを実施ないし検討している企業が37%に上り、16年5月調査での19%の倍となった。特に多かったのが素材業種で、「繊維・紙パルプ」「化学」「石油」「鉄鋼・非鉄」などは軒並み5─6割の企業で値上げ実施と回答。理由として「原材料価格の高騰」(多くの企業)がほとんど。「サービス業」でも人件費と物流費の上昇を理由に6割近くが値上げを予定している。

ただ今年の消費者物価指数(CPI)上昇率の見通しは1%以上との回答は34%にとどまり、1%未満との見方が65%を占めた。直近の実績は11月全国コアCPIの伸びが前年比0.9%となっている。値上げの幅や広がりは、「激しい競争の中で顧客確保のため」(サービス)にそれほど期待できないとみている企業も多いとみられる。

<マイナス金利継続に賛否拮抗、現状維持心地良く>

デフレ脱却が近づいているとの見方が増える中、日銀によるマイナス金利の必要性や金融環境への影響を聞いたところ、「マイナス金利はやめるべき」は52%、「継続すべき」は48%とほぼ拮抗した。

解除に反対の理由として、「物価上昇に至っていない」(機械)、「内部留保が投資に回る循環ができるまで継続すべき」など、マクロ経済からみて時期尚早との見方ある。加えて、「金利が上昇すると借り入れ負担が増す」(機械)、「せっかくの株高と企業業績好調の環境に変化を起こす必要はない」(情報サービス)など、現状の心地良い金融環境を享受していたいとの姿勢も数多く見受けられる。

他方で「やめるべき」との回答からは、異常な政策が長期化する弊害を意識している企業も多いことが示された。

「これ以上金融機関の体力を奪うべきではない」(化学)、「効果は薄れ、国民生活への弊害が大きくなりつつある」(化学)といった声がある。

「アブノーマルな金融政策の下での経済成長は健全なものではない」(ゴム)、「社会に歪みが生じている」(輸送用機器)、「緊急時の対応余力がない。蓄積した歪みが将来不安定要因となる」(その他製造)など、大局的な指摘も目立つ。

今後の日銀の政策方向性としては「緩和強化」との回答は6%に過ぎなかった。16年8月時点では37%、17年8月には14%と、徐々に減少している。一方で、「金融緩和からの出口に向かう」ことが望ましいとの回答は今回45%、「現状維持が望ましい」は49%を占め、いずれも前回・前々回から徐々に増加している。

<黒田総裁続投支持7割 出口まで責任果たすべき>

黒田東彦日銀総裁は、まもなく任期満了を迎えるが、続投を希望する声が68%、続投すべきでないが32%となった。

続投希望の理由としては「金融政策の安定を維持すべき」(化学)といった企業の基本的な要望がある中で、「最後まで責任をもって着地点を探るべき」(小売)など混乱を回避しながら出口政策へ誘導する責任を求める声が多い。

続投に否定的な立場からは「政権とべったりで、独立性が保たれていない」(輸送用機器)、「2%のインフレ率を到達点として緩和を脇目も振らずに続けるという手法は疑問」(電機)など、黒田路線に賛同できないとの声がある。「自分の政策の否定は難しい。異なった判断が必要な時期」(運輸)など、「新しい顔での出口政策」(小売り)を求める意見もある。

(中川泉  編集:石田仁志)

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