ニュース速報

ビジネス

アングル:米農業が迫られる自動化、移民規制で人手不足に

2017年11月15日(水)08時11分

 11月10日、トランプ米大統領が不法移民の取り締まりに乗り出している影響で、米国の農業セクターが人手不足に直面し、ロボット導入など作業自動化を急ピッチで進めている。写真はカリフォルニア州のレタス農家。5月撮影(2017年 ロイター/Michael Fiala)

[ロサンゼルス 10日 ロイター] - トランプ米大統領が不法移民の取り締まりに乗り出している影響で、米国の農業セクターが人手不足に直面し、ロボット導入など作業自動化を急ピッチで進めている。

業界団体の米農業連合会(AFBF)によると、米国の農業に従事する労働者の最大で7割が正式な登録をしていない。また議会では共和党が、すべての雇用主に対して従業員が合法的に国内に居住していることを確認するための社会保障番号のチェックを義務付ける法案を提出した。

オバマ前政権で農務長官を務めた酪農輸出団体の最高責任者トム・ビルザック氏は、こうしたトランプ政権の強硬姿勢が農業界に「多大な不安を生み出した」と話した。

このためただでさえ高齢化に伴う労働力人口の減少に悩まされている農業セクターは、新技術を受け入れざるを得なくなってきた。

実際に農家や食品企業などは、日常的な酪農作業や鶏肉の加工、農産物の生産および収穫などの自動化に動き出している。酪農家向けの搾乳機を製造するレーリー・ノースアメリカのセールスマネジャー、スティーブ・フライド氏は以前、いかに省力化が図られるかを納得させて販売するのに苦労していたが、今ではひっきりなしの問い合わせを受けて休む暇がないとうれしい悲鳴を上げる。

カリフォルニア州でワイン用のぶどう園を所有するダフ・ベビル氏は「もはや自動化計画を持っていないとすれば愚か者だろう」と言い切った。

鶏肉加工大手ピルグリムズ・プライドは今年、工場にロボットやX線技術を導入するための投資を実施する主な理由として、移民の労働力が減っていることを挙げた。ウィリアム・ロベット最高経営責任者(CEO)は「処理作業の自動化と省力化、簡素化に向けてわれわれは相当な投資をしつつある」と述べた。

北米でにんにく生産最大手のクリストファー・ランチの幹部の話では、同社も今年約100万ドルを投じて包装工場にスペイン製のロボットを導入する予定だ。

ウィンターグリーン・リサーチが2014年に公表した報告書では、農作業や酪農、食品生産といった分野におけるロボットの使用は今後大きく増える見込みで、農業関連ロボットの市場規模は13年の8億1700万ドルから20年までに163億ドルに拡大するという。

この分野への投資も活発化。アルファベット傘下のグーグル・ベンチャーズは今年、りんご収穫用ロボットを開発している企業への1000万ドルの出資を主導したほか、ロボットを使って葉物野菜を屋内で栽培している企業が実施した2000万ドルの資金調達に参加した。

また農機大手ディアは、農業用ロボット開発のブルーリバー・テクノロジーを3億0500万ドルで買収している。

一方、農業経営者は労働者の賃金も引き上げている。米労働省の最新データによると、4月9─15日の平均時給は13.23ドルで、前年同期比で4%上がった。

北米の農地に投資している不動産投資信託ファームランド・パートナーズのポール・ピットマンCEOは、「農業界において今は可能な分野は自動化し、どうしても必要な労働力には相応の報酬を提示しろというのが合言葉になっている」と説明した。

(Lisa Baertlein、P.J. Huffstutter記者)

ロイター
Copyright (C) 2017 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米財務省、中長期債の四半期入札規模を当面据え置き

ビジネス

FRB、バランスシート縮小ペース減速へ 国債月間最

ワールド

米、民間人保護計画ないラファ侵攻支持できず 国務長

ビジネス

クアルコム、4─6月業績見通しが予想超え スマホ市
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 8

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 9

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 10

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中